変貌するカジノ産業

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 カジノ産業をめぐるグローバルな動きが加速している。
 米国はオンラインカジノの合法化に向かって動き出しており、グリーやDeNAなど日本のソーシャルゲーム各社にも注目が集まっている。新しくカジノを設置する州も増えてきており、関連産業への波及効果が期待される。

 またアジアではマカオやシンガポールに続いてフィリピンでも大型カジノ・リゾートの建設が進んでいるほか、国内においてもカジノ構想が現実味を帯びてきており、業界ではそれを見越した動きが活発化している。

 これまでカジノ関連産業は、各国の規制が強く、国や地域に限定された特殊産業という位置付けであった。だがここにきて一気にグローバル化とオープン化が進み、投資対象として非常に魅力的なものになってきた。

オンラインカジノ合法化に舵を切った米国
 米国では、カジノはネバダ州(ラスベガス、リノなど)やニュージャージー州(アトランティックシティ)など一部の州においてのみ積極的に運営されてきた。
 ネイティブアメリカンの福祉対策の一環として一部の居留地に対してもカジノが許可されてきたが、ギャンブルを全面禁止している州もあり、全体としてはそれほど積極的とはいえなかった。

 だがリーマンショック以降、各州の財政難が表面化し、カジノを積極的に誘致しようという動きが全米に広がってきている。すでに合法化している州でもカジノの新設を計画することが増えてきており、International Game Technology(NYSE:IGT)やコナミ(東証1部:9766)などスロットマシン製造メーカーにとって追い風となっている。

 また連邦法の規制によって事実上禁止されていたオンラインカジノについても2011年米司法省が見解の見直しを発表した。これによって各州が法整備を行えばオンラインカジノが設置できる見通しが高まってきている。すでにネバダ州ではオンラインカジノのライセンス発行が始まっている。

 オンラインカジノが全米で解禁されれば、ソーシャルゲーム業界にとって大きなビジネスチャンスとなる。ソーシャルゲーム大手の米ジンガ(NASDAQ:ZNGA)はすでにビンゴゲームやポーカーゲームを用意して、全米でのカジノ解禁に備えている(写真左)。

 ジンガと並んで注目されているのが、日本のソーシャルゲーム大手のグリー(東証1部:3632)とDeNA(東証1部:2432)だ。グリーやDeNAが提供するサービスはすでに事実上カジノ化しており、ネット上でカジノ的なゲームを運営するノウハウはジンガを超えるともいわれている。
 両社は、提供しているサービスが射幸心をあおるとしたいわゆる「コンプガチャ規制」問題に直面しており、成長を維持するために、米国市場に活路を見出すのではないかという見方が広がっている。

アジアは国策としてカジノを推進
 アジアでは海外からのカジノ誘致が国家戦略として行われている。マカオ政府は2002年から海外からのカジノ進出を許可しており、米国などから有名カジノが一気にマカオに進出した。マカオは現在ではラスベガスを越えるカジノ都市に成長している。

 シンガポール政府もカジノ関連法を整備し2006年からカジノを解禁している。2010年には米国の大手カジノ会社であるラスベガス・サンズ(NYSE:LVS)が空中庭園プールを持つ巨大なカジノホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」をオープンし世界中で話題となった。

 マカオやシンガポールに触発され、フィリピン政府も国家プロジェクトとして超大型カジノ施設の整備に乗り出している。
 現在プロジェクトが進行中の「Entertainment City Manila」計画では、総額50億ドルの資金が投入され、マカオを越える規模の大型カジノ施設が建設される予定である。
 同プロジェクトには日本のユニバーサルエンターテインメント(東証1部:6425)が参加しており、2014年にホテルをオープンさせる予定だ(写真右はその完成予想図)。

 同社は米国のラスベガスにある大手カジノ・リゾート運営会社であるウィン・リゾーツ(NASDAQ:WYNN)に出資し、カジノ経営のノウハウを蓄積してきた。同社とウィン社は現在係争中であり、背景にはフィリピンへの進出をめぐる思惑の違いがあるといわれている。アジアのカジノ・リゾートをめぐって各社が神経をとがらせていることをうかがわせる。

日本のカジノ合法化に向けて水面下では着々と準備が進む
 日本では石原東京都知事がお台場にカジノを建設する構想をブチ上げたことをきっかけにカジノ合法化に関する動きが広がった。最近では橋下大阪府知事(当時)が大阪のベイエリア再開発の一環としてカジノ構想を提唱し話題となっている。業界では日本のカジノ合法化に向けてすでに動き始めている。

 米国の大手カジノ・リゾート運営会社であるMGMリゾート(NYSE:MGM)は、日本経済新聞の取材に対して日本進出に強い意欲を示した。米国のカジノ・リゾート会社はすでに石原都知事や橋下市長などカジノ構想のキーマンに水面下で接触しているともいわれている。
 日本企業も着々と準備を進めている。

 旅行代理店大手のエイチ・アイ・エス(東証1部:9603)は、経営破たんした長崎の「ハウステンボス」に出資し経営再建を進めている。
 同じく過大投資で経営が破たんした宮崎の「シーガイア」はユニバーサルエンターテイメントの競合企業であるセガサミーホールディングス(東証1部:6460)が完全子会社化した(写真左)。

 ハウステンボスはエイチ・アイ・エスが進めるリストラ策で何とか黒字を計上したものの、依然として経営環境は厳しい。またシーガイアに至っては、経営再建が可能かどうか疑問視する声が大きい。にも関わらず、両社が施設の運営に積極的なのは、国内のカジノ合法化の動きが背景にあるといわれている。
 両施設ともに、カジノが合法化された場合には、有力なカジノ施設になると考えられており、これはその先行投資というわけである。

カジノ産業は数少ない成長市場?
 カジノ産業は、今後も全世界的に順調な伸びを示すと考えられている。新興国は経済成長のエンジンとして、先進国は財政難を解消するための財源としてカジノは有力な手段となっている。

 カジノはこれまである意味で特殊な産業であったため、高収益な企業が多かった。一方経営の不透明さや各国の政策への依存度の高さなどから、一般的な事業会社よりもリスクが高い投資先とされてきた。
 だが、より開かれた産業になることで、特殊要因によるリスクは小さくなり、ある意味で普通の投資先となってくるだろう。だがその分、以前のような高い収益は期待できなくなるかもしれない。

 また各国には道徳的な観点からカジノ産業を嫌う風潮も根強く残っている。それでも、全世界的に低成長が続く環境を考えれば、順調な市場拡大が期待できるカジノ産業は、当分のあいだ魅力的な投資対象でありつつけるだろう。

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