韓国経済の真実

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 韓国経済や韓国企業に対する評価が二分している。

 経済誌、新聞、テレビなどの既存マスメディアでは、サムスン電子(KSE:005930)や現代自動車(KSE:005380)といった韓国企業の躍進を取り上げた記事や、米韓FTAに代表される韓国の貿易政策に関する賞賛記事が目立つ。

 一方ネットメディアの世界では、韓国経済の脆弱性を指摘する声が多く聞かれる。両国には歴史的、政治的な背景が横たわっており、冷静な判断をしにくい環境にある。本当のところ韓国経済の実情はどうなっているのか探ってみた。


 韓国企業の躍進が著しいのはもはや誰の目にも明らかである。エレクトロニクスの分野におけるサムスン電子の存在力は圧倒的であり、日本メーカーはほぼ完敗したといってよい。また現代自動車の北米市場での追い上げもすさまじく、日本メーカーの優位性はほぼ消滅しつつある。近い将来、自動車産業も韓国勢に敗北するかもしれない。

 また政策面でも韓国は「お手本」として取り上げられることが多い。原子力発電所や高速鉄道といったインフラ分野における官民一体となった輸出振興策、対EU、対米国と政治主導で相次いで締結したFTA(自由貿易協定)などがその代表だ。

韓国でささやかれる経済危機の発生
 一見絶好調に見える韓国経済だが、経済危機が迫っているとの報道も少なくない。韓国経済が一部の財閥企業の輸出に依存しており、内需が十分に拡大しておらず、欧州の成長鈍化が長期化すると大きな打撃になるというものだ。

 韓国では家計部門の負債が増加しており、一旦経済の収縮が起こると多額の不良債権がドミノ倒し的に発生するとの見方もある。日本ではあまり詳しく報道されていないが、2012年5月に発生した貯蓄銀行4行の経営破たんでは、一部で取り付け騒ぎも発生した。
 しかも、貯蓄銀行4行のうちの1行である未来貯蓄銀行の金チャンギョン会長は、銀行の預金を横領し、漁船で中国に密航しようとして逮捕されるというスキャンダルまで起こしている。

 かねてから韓国では、「経済危機に備えて密かに資産を海外に移す富裕層が増加している」(韓国系商社)といわれており、金会長の中国密航事件によって、この噂がさらに信憑性を増す結果となってしまった。

 韓国は1997年のアジア通貨危機によって大混乱に陥りIMFの支援を仰いだ。その教訓から、通貨スワップ協定を各国と結んで流動性を確保するとともに、3000億ドルを超える水準(日本の4分の1)まで外貨準備を積み増している。1997年当時と比較すると、経済危機に対する備えは格段に強固になっている。
 それでも経済危機に対する懸念が払拭されないのはなぜだろうか?同じ輸出主導型経済である日本と比較して考えてみたい。

 韓国の2011年の貿易サービス収支は約300億ドルの黒字、2010年は400億ドルの黒字である。日本は2010年は750億ドルの黒字だったが2011年からは貿易赤字に転落しており、輸出による稼ぎという面ではすでに韓国が日本を上回っている。


 だが、最終的な国の損益である経常収支は、1200億ドルの黒字を確保している日本(2011年)に対し、韓国は265億ドル(2011年)の黒字と日本の4分の1以下の水準である。貿易では日本をしのぐ利益を確保しているにも関わらず、この差はどこから来るのか?それは、所得収支の違いである。

韓国と日本はアリとキリギリスの関係
 所得収支は海外への投資から得られる利子や配当のことである。2011年の日本の所得収支は約1750億ドルの黒字だが、韓国の2011年の所得収支は赤字だ。
 日本は推定で3兆5000億ドルの金額を海外に投資しており、ここから莫大な利子配当収入を得ている。だが、韓国の対外投資額は推定で3000億ドル程度と日本の10分の1以下である。しかも韓国は対外負債も抱えており、逆に利子や配当を支払わなければならない。
 
 日本は巨額の貯蓄を海外に投資し、その配当でメシを食うという完全な金融立国になっている(日本人の多くはそう思っていないが)。このため、震災の影響や製造業の競争力低下によって貿易赤字が拡大しても、すぐに全体的な収支が悪化するわけではない。
 
 これに対して韓国は、輸出による利益が減少すると、そのまま経常収支の悪化に直結してしまう。また貿易黒字のGDPに対する比率が日本よりもはるかに大きいため、その影響はさらに大きなものになる。
 
 では、日本はなぜこれだけの巨額な運用資金を持つことができているのか?それは貿易黒字を確保できた期間の違いによるところが大きい。

恵まれ過ぎていた日本の高度成長
 日本が獲得した1977年以降の経常収支の金額を累積すると3兆2000億ドルにもなる。だが韓国が同じ期間に獲得することができた経常収支はわずか2500億ドルだ。
 日本は戦後の混乱期を脱したあとは、高度成長が続き、一貫して外貨を稼ぐことができた。日本が獲得した外貨のほとんどは米国債という安全な資産で運用されていたため、それを担保に国内では豊富なマネーを供給することが可能となった。貿易で稼いだ外貨を安全に運用し、その資産を担保に内需を拡大させるという好循環が成立したのである。

 これに対して韓国では、朝鮮戦争によって国が分断され、戦争終結後も軍事独裁政権が長く続いた。ベトナム戦争前後から本格的な経済成長が始まり「漢江の奇跡」とも呼ばれたが、ドイツや日本に並ぶ水準の貿易黒字を確保できるようになったのは1990年代に入ってからである。

 この時間の差が、内部留保の決定的な違いとなって現れてきている。内部留保が薄い韓国では、主力産業の資金をすべて国内で調達することは難しく、外国からの融資に頼らざるを得ない。このため外国に対して利子を支払う必要があり、これがさらに経常収支を悪化させてしまう。
 韓国が途上国であった時代までは十分な外貨準備だったものが、先進国の仲間入りをしてしまうと、この差が大きなハンデとなってしまうのだ。


 経済や産業のグローバル化もこの面では不利に働く。サムスンは世界最大の電機メーカーとなったが、その工場のほとんどは海外である。せっかく製品を世界に販売して外貨を獲得しても、設備投資は国内ではなく、海外に向けて行わなければならない。
 高度成長期の日本は、稼いだ外貨は米国債で運用できたので、実質的にほぼ全額を国内工場の設備投資に振り向けることができた。経済のグローバル化が進んでいない時代は、現在と比べると本当に恵まれていた。

 日本と比べて脆弱な経済基盤が韓国の経済危機の懸念材料となっているならば、即効性の処方箋は存在しない。韓国が経済危機の懸念に振り回されないようになるためには、現在の貿易黒字の水準を少なくとも10年間は継続しなければならないだろう。
 一方で日本は、莫大な利子収入によって、本来よりも衰退のスピードが緩和された状態となっている。今後10年間の間に経済モデルの転換が実現できなかった場合、次の経済危機のターゲットになるのは日本かもしれない。

参考記事:「竹島上陸への対抗措置が韓国経済に与える影響

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