日本株上昇の余地

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 日経平均株価がとうとう2万円の大台を超えた。2015年4月10日の東京株式市場は、前日終値より52円高い1万9989円でスタートし、直後に一時2万円を突破した。2000年4月以来、約15年ぶりの2万円台回復ということになる。
 今回の株高については、この先も継続的に上昇が続くという楽観的な見方がある一方、官製相場であり大きな下落が待っているという正反対の見解も出ている。
 株価については、株価そのものの水準や企業の業績だけで買われ過ぎかどうかを判断することはできない。株価上昇のペースや売り買いの需給といった様々な要因が関係する。今回の株高について、各方面から検証してみた。

業績面ではまだ上昇余地がある
 今回、日本の株価が上昇したのは、自動車産業を中心に、米国の好景気の恩恵を受け、業績を拡大させる企業が増えたことが主な要因といわれている。欧州中央銀行(ECB)が量的緩和に踏み切り、欧州の株価が上昇したことも、投資家心理を明るくしている。

 日本企業の業績やそれに対する市場の評価という点で考えると、株価に割高感は見られない。現在の日経平均株価採用銘柄の1株あたりの利益予想(2015年3月期)は約1100円である。4月17日の日経平均の終値は1万9652円なので、PER(株価収益率)は約17.9倍ということになる。

 現在、日本企業、特に自動車を中心とする製造業は好調な米国経済に支えられ、業績の拡大が続いている。日本国内への波及効果は限定的なので、中小企業などでは景気が拡大しているという印象は薄い。だが、米国市場を開拓できている大手製造業に限って言えば、売上高と利益は順調に伸びている。日経平均採用銘柄にはこうした企業が多いので、株価も上昇が続いているというわけだ。

 17.9倍というPERの水準が今後も変わらないのだとすると、2016年の業績がさらに拡大すれば、それに合わせて株価も上昇することになる。仮に2016年3月期における1株あたりの利益が、現在の2割増の1320円だと仮定すると、理論的には株価は2万3000円を超える。業績予想を素直に反映すれば、この水準まで買い上がることができる。

強気の投資家はPERはまだ上昇すると判断している
 強気の投資家は、その先についてもまだまだ買えると主張している。現在のPERは過去と比較すると、低い水準にとどまっており、さらに高いPERが許容されることになれば、株価はもっと上昇する可能性があるという。実際のところ、PERは歴史的にどのような動きを見せてきたのだろうか?

 図1は、日本市場におけるPERの歴史的推移を示したものである。これは東証1部の全上場銘柄の単純平均株価に対する1株あたり利益の倍率なので、日経平均の株価収益率とは異なる。だが、全銘柄の単純平均と225銘柄の単純平均はかなり近い動きをするので、相対的な変化という意味では、日経平均のPERに近いと考えてよいだろう。


 確かに現在のPERは、過去と比較して特別に高い水準というわけではない。もっともPERという指標は赤字の場合には算出できなくなるし、企業の利益が大きく減少すると極端に大きな値を示すという特徴がある。
 図の中でグラフが記載されていない部分は、異常値が出ている部分である。また1995年前後など、極端にPERが高くなった時期もある。PERを評価する場合には、かなりブレのある数字であることを前提にする必要がある。
 だが、そうだとしても、バブル経済がピークだった1980年代と比較すれば、現在のPERはかなり割安である。バブル崩壊直前にはPERが70倍だったこともあり、それと比較すれば、現在の株価水準は過剰とはいえないだろう。

 PERほど極端な変化がない指標としてはPBR(株価純資産倍率)ある。PBRは利益ではなく、企業の1株あたりの純資産と株価との関係を示したものである。企業の純資産は利益ほど大きな変動はないので、長期的な推移を検証するには適した指標といえる。
 図2はPBRの推移を示したものである。やはりバブル期の評価は突出しており、PBRは5倍を超えている。バブル崩壊後は、1.0倍から1.5倍の間を行き来しているので、現在の水準はやはりそれほど割高とはいえない。


現在の市場は期待先行という面が強い
 現在の水準がそれほど割高ではないとすると、今後、バブル期のような高いPERやPBRにシフトしていくのだろうか?それはどの部分が株価に大きく反映されたのかによって大きく異なってくる。
 バブル期については、1985年から1989年の日経平均上昇分のうち、業績による部分は25%で、残りはPERなど将来への期待値が75%を占めていた。まさに期待先行という点でバブルだったということになる。
 2003年からリーマンショック直前の2007年までの株価上昇局面はこれとは様子が異なっている。業績面の上昇が40%となっており、期待値は60%程度に収まっていた。バブル期に比べると業績主導の相場だったことが分かる。

 一方、現在のアベノミクス相場は、業績面は約35%、期待値による部分が65%となっている。バブル期ほどではないが、2007年の上昇局面に比べると期待先行という面が強い。PERの絶対値としては割安であっても、これまでの株価上昇は期待先行だったという点には留意する必要がある。やはりここからもう一段上昇するためには、2016年3月期の業績についてしっかりと確認する必要があるだろう。
 
 株価の上昇ペースについても少し警戒が必要かもしれない。今回の株価上昇は安倍内閣が成立する直前の2012年8月頃からスタートしているが、約32カ月で株価は2.3倍に上昇している。2007年の株価上昇は、50カ月で約2.3倍なので、今回の株価上昇は前回の1.5倍のペースになっていることが分かる。
 今回の株価上昇は、バブル末期と同水準となっており、かなりハイペースであることは間違いない。急激な株価上昇には必ず反動が伴うものであることを考えると、短期的な調整が起こる可能性も否定できない。

長期的には大きな反動も
 もっとも、売買の需給という面では、不安はまったくない。安倍政権は、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式シフトを進めており、GPIFはこれを受けて新しいポートフォリオを発表している。

 新しい運用方針によると、国債の比率が60%から35%に低下する一方、国内株の比率は12%から25%に増加している。外国株を合わせると株式の比率は50%にも達する。
 すでに株式へのシフトが始まっているが、まだ数兆円の買い余力がGPIFには残っているといわれる。またゆうちょ銀行の運用を株式にシフトさせるという案もあり、ゆうちょ銀行の運用資金がこれに加わると、当分の間、株式市場では買い一色となる可能性が高い。そうなってくると、当分の間、大きな下落はなく、業績の拡大以上に株が買われるというシナリオも成立することになる。

 ただ、業績要因以上に買われた市場には、これを修正する局面が必ずやってくる。公的年金が大量に買い進めた後であるだけに、下落局面でこれを支える投資家は存在しない可能性が高い。このタイミングがいつになるのかは分からないが、一旦、下落トレンドに入った場合の影響が大きいことだけは間違いなさそうだ。

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