世界経済変調

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 米国株式市場の下落が止まらない。10月9日のダウ平均株価は、前日比334ドル97セント安の1万6659ドル25セントと約1年3カ月ぶりの下げ幅となった。週が明けても下落は続き、15日には一時456ドル安となり、1万6000ドルを割り込んだ。8月には100ドル前後だった原油価格も大幅に下落しており、80ドル割れ寸前となっている。一連の下落を受けて日本の株式市場も大幅に値を下げている。

 今回の株価急落は、世界的な景気減速の影響を受けたものというのが一般的な見方である。IMF(国際通貨基金)が7日発表した最新の世界経済見通しでは、全世界の2014年における実質経済成長率予想はプラス3.3%となり、7月時点の見通しから0.1ポイント引き下げられた。特に欧州と日本の景気失速が著しく、世界的なディスインフレ傾向がより顕著になってきている。

欧州と日本の低迷が顕著
 特に、これまで好調であったドイツの成長率見通しが引き下げられたことは今回の株安に大きく影響した。ドイツの成長率見通しは0.5ポイント低下してプラス1.4%になり、景気失速が明確になってきた。以前から低迷が続くフランスはさらに失速してプラス0.4%(0.4ポイント低下)、イタリアは0.5ポイント低下でマイナス成長に転落している。ユーロ圏全体ではプラス0.8%となっており、前回見通しから0.3ポイントの引き下げとなっている。

 ドイツは欧州全域に製品を輸出しており、EUのメリットを最大限享受してきた。南欧を中心に低成長が続いていたが、ドイツはあまり影響を受けていなかった。だが今回のドイツにおける見通しの引き下げは、欧州全体の景気低迷がかなり深刻になっていることを意味している。これはEUの枠組み自体に起因するものであり、構造的な問題といってよい。

 欧州よりも成長率見通しの引き下げ幅が大きかったのは日本である。日本は前回予想から0.7ポイント下落してプラス0.9%にとどまった。IMFでは消費増税の影響が大きいと分析している。消費税の導入が景気を冷やすきっかけとなったのは確かだが、背景にはインフレによる購買力の低下という問題が存在しており、日本の低迷も構造的なものである可能性が高い。

米国経済は今のところ順調
 米国の株価は急落したが、景気低迷が顕著となっている欧州や日本と異なり、米国の経済自体は堅調である。IMFでは米国の成長率見通しについて大幅に引き上げており、前回見通しから0.5ポイント上昇してプラス2.2%とした。
 10月3日に発表された雇用統計は極めて良好で、非農業部門の雇用者数の増加は24万8000人と事前予想を大きく上回った。失業率は5.9%と、リーマンショック前の水準まで回復している。

 米国はGDPの7割が個人消費となっており、世界景気減速の影響を受けにくい。だが製造業を中心に世界経済から影響を受けるセクターも存在しており、景気低迷が長引けば最終的に米国経済の足を引っ張ることになる。株価はこれに敏感に反応したというわけだが、問題はこれが一時的なものなのかという点である。

 今のところ、米国経済への影響はそれほど大きくないとみる市場関係者が多いのだが、その理由は原油価格の動向である。今回の株価急落を受けて、原油価格も大きく下落しているが、原油価格の下落は、米国経済にとってプラスとなる要素が大きいのである。


原油価格下落は米国にとってメリット
 原油価格が大きく下落したのは、景気の低迷で目先の需要減少が懸念されたことと、産油国が減産していないという短期的な需給要因が大きい。だが長期的に見ても原油価格に対しては下落圧力が高まっている。その理由は米国におけるシェールガス開発の進展である。

 米国はシェールガスの開発によって、近い将来、エネルギーのすべてを自給できることになる。自給できるからといって米国が原油の輸入を停止することはあり得ないが、中東からの輸入量は確実に減ってくることになる。そうなると、産油国が大幅に減産しない限りは、原油価格は長期にわたって低下することになる。

 米国は世界でもっとも旺盛に石油を消費している国であり、原油価格の下落は、米国の消費を活発化させる。原油価格の低下で米国の消費が下支えされれば、米国は景気を失速させずに済むかもしれない。市場において、そう解釈されるようになれば、株価下落も一定水準で収まることになるだろう。

長期投資家にとってはチャンス?
 もっとも、別な要因で株価の低迷が長引くという見方もある。米国の株式市場は、リーマンショック前の水準を突破しているが、一方で米国の不動産価格はまだリーマンショック前の水準に達していない(図1)。FRB(連邦準備制度理事会)による量的緩和策で金利が低下し、これが株高をもたらしたことは否定できない。

 一部の市場関係者は、現在の米国株は割高とみなしており、株価の下落が長引けば、利益確定する投資家が増えてくる可能性が高い。そうなってしまうと、これらの売りが出尽くすまで、米国株は下落することになる。

 ただ、米国株が本格的な調整ということになれば、長期的なスタンスの投資家にとってはチャンスとなるだろう。エネルギーの自給は米国の貿易赤字を減少させ、ドル高をもたらすことになる。また米国は人口が増加している数少ない先進国であり、長期的な見通しは明るい。下落局面のリーズナブルな価格で株式を取得することができれば、長期的には高いパフォーマンスを得られるはずだ。

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