円安の流れはホンモノか

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 1ドル=102円付近で安定していた為替相場が動き始めた。8月中旬からドルは急上昇を始め、8月25日には104円を、続いて9月2日には105円を超えた。さらに9日の週に入って、とうとう106円を突破する状況となっている。目先はドル高材料が揃っているため、当分はこの流れが続く可能性が高い。

 ただし、これが本格的な円安トレンドの再スタートなるのかは、まだ判断できる段階にはない。
 最終的な為替相場の動向は、米国の金利動向次第ということになるが、FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長はこの点について明確なスタンスを表明したわけではないからだ。議長の発言次第では、円高への揺り戻しも考えられる。

米国の利上げ観測がきっかけ
 ドル円相場は2014年4月以降、半年近くにわたって膠着状態が続いていた。チャート的にはそろそろ動きが出るタイミングだったが、実際8月に入ると為替相場は大きく動き始めた。

 ドル高になっている大きな要因は、米国の金利見通しである。足元では、長期的な成長率の鈍化予想や、ウクライナ情勢、欧州経済の停滞などから、安全資産である米国債が買われ、金利が低下している。だが米国の景気回復は順調という共通認識は変わっておらず、市場ではいつFRB(連邦準備制度理事会)が利上げを行うのかに注目が集まっている。

 FRBのイエレン議長は、利上げについて特に前倒しするという発言をしているわけではないが、FRBの一部メンバーが早期利上げを主張するなど、徐々に利上げ前倒しの雰囲気が高まっている。市場ではこうした情勢の変化を受けて、ドルを買う動きが活発化している。

ECBが量的緩和に踏み切ればさらなるドル高に
 欧州の景気低迷もこの動きを後押ししている。欧州ではこのところインフレ率の低下が大きな問題となっており、一部からはデフレに逆戻りするリスクも指摘されるようになっている。

 ECB(欧州中央銀行)はすでにマイナス金利政策を導入しているが、やがて本格的な量的緩和策に踏み切らざるを得なくなると見る関係者は多い。このタイミングでECBが量的緩和を実施すれば、さらにドル高が進むことになる。

 ウクライナ情勢の複雑化もドル買い材料となっている。当初ロシアは早期の事態収拾を望んでいたフシがある。だがプーチン政権は、ウクライナの親ロシア派や国内の反プーチン派の動きによって引くに引けない状況となっている可能性が高い。ウクライナ情勢が短期間で改善する見通しは低く、ユーロ売り・ドル買いが進んでいる。



日本では実需のドル買い
 ドル円については、ドル買い実需の存在が大きく影響していると考えられる。日本はすでに慢性的な貿易赤字であり、常に一定金額のドル買い需要が存在している。
 ただ、一部の投資家がアベノミクスによって進んだ円安が一旦是正されるとの見方を強めたことで、円買いドル売りのポジションを取っていた。これによって実需のドル買いによる影響は抑制されてきた可能性が高い。

 だがここにきて円安がさらに進むということになると、これらの投資家は一旦ポジションを解消する可能性が高い。ドル買いがさらにドル買いを呼ぶ展開となるため、今の局面は一気にドル高に振れやすい状況といえる。このため長期的にはともかく、ここしばらくの間は円安・ドル高の傾向が続くと見る投資家は多い。

 このように国内要因、海外要因ともに、今のところドル買いの材料しか見当たらないのが現状である。だが、これが長期的な円安・ドル高トレンドの再開なのかについては、まだ判断が難しいところだ。

結局はFRB次第
 米国では早期利上げ観測が高まっているが、FRBのイエレン議長自身は、金利について明確な方針を示したわけではない。イエレン氏はバーナンキ前議長の下で副議長をつとめており、FRBの実務には精通している。このため、多くの市場関係者はイエレン氏は現実的な対応を選択すると考えている。

 一方、イエレン氏は非常にリベラルな人物としても知られており、労働市場の改善に強い関心を持っている。もしイエレン氏が労働市場の改善をより重視した場合、市場が考える程、利上げが早まらない可能性もある。

 その場合、一旦は円高・ドル安方向に再度相場が動くリスクも残されている。ただ長期的には、米国の景気回復は順調であり、どこかのタイミングで利上げに踏み切ることは共通認識となっている。米国の利上げをきっかけに、長期的な円安トレンドが始まる可能性は十分に考慮しておくべきだろう。

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