IT企業決算から探るトレンド

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 米国主要IT企業の2014年4~6月期決算が出揃った。PCからスマホへのシフトがさらに顕著になっており、ネット広告は完全にスマホ経由が主流となった。また先進国におけるネット利用者が飽和状態になりつつあることから、各社とも新興国向けの市場開拓が今後のカギとなりつつある。

 グーグルは、広告の伸びは鈍化しているものの、スマホ・シフトによる広告単価の低下には歯止めがかかった。今までのような急成長は見込めないかもしれないが、業績は安定的に推移することになるだろう。アップルとIBMが業務用アプリの開発で提携するなど、スマホを業務用に活用するという新しい動きも拡大しつつある。

フェイスブックは過去最高益だが、新興国の収益化が課題
 フェイスブックの決算はモバイル広告が順調に伸び、売上高、利益とも四半期ベースでは過去最高となった。売上高は前年同期比61%増の29億1000万ドル(約2962億円)、純利益は約2.4倍の7億9100万ドル(805億円)であった。

 6月末時点における同社の月間利用者数は13億1700万人で昨年よりも14%増加した。一方、モバイル端末経由の利用者数は10億7000万人で昨年より31%も増加している。利用者全体の伸びに対して、モバイル経由の利用者の伸びが顕著となっており、スマホ・シフトが同社の収益を拡大させていることが分かる。

 同社の業績は、当面、順調に推移する可能性が高いが、今後の課題は新興国の収益化である。同社サービスの利用者における地域別の割合は、北米が16%、欧州が22%、アジアが31%、その他が31%となっており、圧倒的にアジアとその他の地域が多い。
 しかし、売上高はこれとは正反対になっており、半分近くが北米からのものである。アジアやその他地域の利用者ほとんど収益に貢献しておらず、今後の利益成長のためには、北米以外の地域における収益化が必須となる。

中国向けが堅調なアップル
 一方、アップルは中国市場の開拓に成功している。中国移動通信(チャイナモバイル)経由のiPhone販売が伸びたことで、売上高は前年同期比6.0%増の374億3200万ドル(約3兆8100億円)、純利益は12.3%増の77億4800万ドル(約7890億円)となった。

 iPhoneの販売台数は13%増の3520万台。中国向けの売上高は前年同月比で28%増となっている。一方でiPadの販売は1327万台と9%の減少となった。新興国向けの製品単価は安く、以前に比べて利益を確保しにくい状況にあるが、販売台数の増加に伴って60%の原価率を維持している。

 全体としてはまずまずの決算内容といえるが、同社に対する市場の期待はあまりにも高い。一部の投資家が、中国向け販売の大幅な拡大を期待していたことから、決算発表後には、多少の失望感が広がっている。株価のもう一段の上昇は難しいかもしれない。


IBMとの提携で法人用途開拓の可能性も
 期待が過大なアップルだが、中長期的に見れば、やはり追い風が吹いている。決算と前後して、企業向けの携帯端末分野で米IBMと提携すると発表したからである。
 アップルとIBMは今後、企業向けに100を超えるスマホ用のアプリを開発し、アップルのiPhoneやiPad上で利用できるようにする。バックエンドのシステムには、IBMが提供するクラウド・サービスを活用する。

 これまでアップル製品はコンシューマ用途が中心だったが、IBMの顧客基盤向けにアプリを提供することで、法人用途を開拓することが可能となる。今後はビジネス向け製品とコンシューマ向け製品の垣根は限りなく低くなり、法人が業務用に専用端末を配布するといった動きも減ってくることになるかもしれない。


急成長モードを卒業しつつあるグーグル
 前四半期の決算では売上高が初めてマイナスになるなど、失速の兆しが出ていたグーグルだが、今回の決算はまずまずの内容となり、市場には安心感が広がっている。
 売上高は、前年同期比21.7%増の159億5500万ドル(約1兆6240億円)、純利益は6%増の34億2200万ドル(約3480億円)だった。広告のクリック数は、前年同月比で25%増、前期比では2%増となった。クリック単価は、前年同期比では6%のマイナスだったが、前期比では同水準を維持している。

 同社のビジネスは基本的に広告のクリック数とクリック単価に依存する。これまでは、クリック数の増加ペースがクリック単価の下落ペースを上回っていた。これによって同社は増収増益を続けることができたわけだが、前四半期はクリック数の伸び悩みが顕著になっていた。
 今期は、クリック数、広告単価ともにほぼ横ばいとなり、大きな動きはなかった。スマホ市場の拡大もそろそろ頭打ちであることを考えると、同社の収益も安定的に推移する可能性が高くなってきたといえるだろう。

 同社は車の自動運転などロボットの開発を急ピッチで進めている。こうしたビジネスに広告がどのように実装されてくるのか現時点では判断がつかないが、同社の収益に関して次のブレークスルーがあるとすると、こうした新規事業の登場後ということになるだろう。

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