ロボット時代の本当の姿

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 ソフトバンクが安価なロボットの製品化を発表したことで、いよいよ日本でもロボットのビジネスが本格的に立ち上がろうとしている。
 ロボットの普及はインターネットを超えるインパクトをもたらすといわれているが、一方で、本当にそのような状況になるのか疑わしいという声も多い。

 だがロボットの普及は、これまでの想像を超えるレベルで社会を変革することになる可能性が高い。ロボット社会がどこに向かおうとしているのかについては、ソフトバンクが掲げるビジネス・モデルや、グーグルが世界中のロボット企業を買い漁っている理由などを考えると、よりハッキリしてくるかもしれない。

Pepperのポイントはオープン化されたビジネス・モデル
 ソフトバンクモバイルは2014年6月、人と対話することができるロボット「Pepper」を発表した。Pepperはソフトバンクが買収したフランスのロボット会社が開発したもので、価格は19万8000円と安価な設定になっている。人の表情や声のトーンを認識する機能を搭載しており、あたかも感情を持った生き物のように人と会話できるという。

 これまでも感情表現が得意なロボットは数多く登場しており、Pepperだけが特段、感情表現に優れたロボットというわけではない。むしろPepperの特徴的な点は、大胆なビジネスモデルの方にある。

 ソフトバンクでは、Pepperを展開するにあたって完全なオープン化戦略を採用している。Pepperを動作させるためのプログラム仕様はすべて公開されており、すでに高機能な開発ツールも提供されている。興味のある人は、誰でもPepperのプログラム作りに参加できるようになっている。開発者が開発したプログラムを配布するサイトも近くオープンするという。

実は家庭用市場の潜在力が大きい?
 こうしたやり方は、最近では多くのソフトウェア・メーカーが採用している。仕様をすべて公開してしまい、多くの人が開発に参加できるようにすることで、デファクト・スタンダードを握ってしまおうという考え方である。こうした戦略を採用しているのは、ソフトバンクがロボットの主要な顧客は製造業ではないと考えているからである。

 現在、日本国内には30万台を超える産業用ロボットが存在しているが、多くが工場の製造ラインに配置されている。20年後、国内のロボット市場は10兆円を超えるともいわれているが、その大半を占めるのは、製造業ではなくサービス分野である。サービス分野としてよく引き合いに出されるのが介護なのだが、むしろ、それ以上に大きな潜在力を持っているのが一般家庭なのである。

 Pepperの製造は台湾の鴻海精密工業に委託しており極力コストダウンを図っている。それでも19万8000円という価格は、家庭への普及を意識した、かなり戦略的な価格設定であることは間違いない。逆にいえば、家庭でのロボット需要が極めて大きいと見ている可能性が高いのだ。

家庭のロボット化はすでにかなり進んでいる
 家庭用ロボットにそれほどニーズはないとの見解もある。だがそれはロボットという商品の一部しか見ていない。確かに大型の人型ロボットが各家庭に入り込み、お茶を持ってきたり、家事を手伝ってくれるわけではないだろう。だが、人型ロボットは、あらゆるロボットを統合し、最終的に人間とのインタフェースとしての役割を持つ可能性が高まっているのだ。

 すでにお掃除ロボットのルンバは一般家庭に普及し始めているし、韓国のLGエレクトニクスはLINEを使って利用者と対話できる冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどを発表している。
 同社の家電には高度な自然言語解析機能が搭載されており、「冷蔵庫には何が入っているの?」とLINEで聞くと、冷蔵庫内のカメラが画像認識を行い「ビールが3本入っています」などと返してくる。

 つまり、家庭に存在するあらゆるデバイスがネットを介して接続され、あたかも意思を持った相手としてふるまう社会が、もうすぐそこまで来ているのである。その時に、人型のロボットは、あらゆるデバイスのゲートウェイとして機能している可能性が高いのだ。

ロボットとクラウドの融合
 さらにIT各社は、すでにその先のことを考えている。あまり話題になっていないが、Pepperの制御は本体に搭載されたコンピュータがすべて行っているわけではない。ネットを通じてソフトバンクが提供するクラウドに接続されており、高度な処理は遠隔で行われているのだ。

 ここで重要となってくるのは、ロボットと人との会話である。すでにSNS大手のフェイスブックは、人の会話を収集し、それをビジネスに応用する準備を着々と進めている。
 同社が5月に発表した新しいサービスでは、スマホのマイクを利用して、音楽やテレビ番組など、利用者の周囲の音を収集する。収集された音は解析され、同社のデータベースと照合、合致する曲や番組があれば、その情報を表示してくれるという。

 だが同社が本当に狙っているのは、音楽ではなく会話だといわれている。音声の自動認識機能はかなり普及しているので、利用者の声はアーカイブ化が可能な状況となっている。これと照合機能が組み合わされれば、世界中にあるスマホから会話内容を収集して分析することができる。つまり、いつ、誰が、どこで何を話したのかについて情報が丸裸になるのだ。

グーグルがロボット会社を立て続け買う理由
 フェイスブックは、会話の収集や声のデータベース化については表向き否定しているが、音の収集について、同社関係者が認めたという報道もある。真偽の程は定かではないが、技術的には今すぐにでも実現が可能なことは間違いない。

 ロボットがこれと同じ事を意図しているのだとしたらどうだろうか?ロボットはうまく普及すれば、スマホ以上に利用者に近いデバイスとなる。あらゆるデバイスやサービスがロボットを介してつながり、ロボットとの会話は、その内容についてはもちろんのこと、声の分析によって、利用者の体調や心理状態までもクラウド上で管理されることになる。

 かくして、クラウド上には多くの人間の行動や会話といった情報が蓄積されていくことになる。グーグルはこれまで10社近くのロボット・メーカーを立て続けに買収しているが、本当の狙いはこのあたりにある可能性が高い。個人のプライバシーのマネタイズは、究極的なレベルにまで発展していくことになるかもしれない。

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