新聞社の経営実態はどうなっている?

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 ネットに押され、新聞業界は苦戦が続いているといわれる。米国ではネットを中心に新しいニュース媒体が相次いで登場しており、新聞社の経営環境はめまぐるしく変化している。2013年10月にはアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が名門ワシントンポストを買収するという驚くべきニュースもあった。

 一方、日本では新聞の発行部数減少が続いているものの、新聞社の経営に大きな変化は見られない。経営は決して良好とはいえないが、強固な読者層に支えられ、何とか収益を維持している。ただ盤石の財務体質を持つ新聞社とそうでない新聞社の差は激しくなる一方であり、このまま読者離れがジワジワと進んでいけば、経営に行き詰まる新聞社が出てくる可能性はある。

新聞の発行部数はジワジワ減少
 新聞の発行部数は年々減少が続いている。2006年には5000万部を超えていたが2013年は4700万部に減少した。1世帯あたりの購読部数も2006年には1を超えていたが2013年には0.86となっている(図1)。

 部数の減少は緩やかだが、新聞社の経営は購読料よりも広告収入の依存度が高い。部数が減少すると広告媒体の価値は急激に減少するので、広告収入の落ち込みは部数の落ち込みよりも激しくなる。新聞の広告収入は2006年には1兆円を超えていたが、2006年には6200億円まで落ち込んでいる。

 もっとも同じ期間において、雑誌の広告費は4800億円から2500億円と半分近く減少していることを考えると、新聞の経営環境は雑誌に比べればマシである。宅配という強固な販売システムに支えられているため、既存の読者はそう簡単に新聞を手放すことはないようである。


赤字転落した時期もあったが、現在は小康状態
 広告の落ち込みを反映して新聞社の売上げは減収が続いている。朝日新聞は2009年3月期には5400億円の売上げがあったが、2013年3月期には約4700億円と売上高が約13%減少している。同じ期間、日経は約20%、産経は約15%売上げを減少させている。

 2007年から2009年にかけてはリーマンショックの影響もあり広告費が一気に減少した。朝日は2009年と2010年の決算において、連結決算の算出後としては初の赤字を計上している。日経も2009年12月期の決算で赤字に転落している。

 だがその後、各社はコスト削減を実施し、直近の決算では利益を捻出できる体質に戻っている。朝日新聞の2013年3月期決算における経常利益は約173億円、日経新聞の2012年12月期決算における経常利益は約175億円である。日経新聞の売上高は約2900億円なので、経常利益率は約6%である。上場企業の平均的な経常利益率は5%弱といわれているので、まずまずの水準といってよいだろう(図2)。


突出している朝日新聞の財務体質
 もっともすべての新聞社が同じような状況というわけではない。苦戦が伝えられる毎日新聞は売上高が約2400億円、経常利益は23億円なので、朝日新聞の7分の1しか利益を上げていない。産経新聞も同様で、約1300億円の売上高に対して、経常利益は22億円となっており、収支はギリギリである。

 だが新聞社の今後の存続性を考えるにあたっては、毎年の売上高と利益に加えて、資産状況についても分析する必要がある。資産について見てみると朝日新聞が突出していることがわかる。

 同社は6000億円近い総資産を保有しているが、このうち半分以上が純資産となっており、借金は実質的にゼロという超優良企業である。また2000億円近い金額を運用に回しており、ここからの収益も豊富だ。築地の東京本社に加え、有楽町マリオン、大阪の中之島フェスティバルタワーなど、収益性の高い優良不動産を多数保有している(築地は主に自己使用)。過去からの利益蓄積がいかに大きかったのかが分かる。

経営体力の違いが鮮明に
 日経も朝日ほどではないが、財務体質は良好だ。だが、2008年には340億円をかけて大手町に新社屋を建設している。これが今後、同社の経営にどのような影響を与えるのかは今のところ何ともいえない。

 一方、毎日新聞は、総資産のうち8割が負債で占められており、借金依存体質が目立つ。本社ビル以外には目立った収益不動産はなく、新聞事業の不振を本社ビルの賃貸収入でなんとかカバーしているという状況だ。産経も同様で、負債比率が極めて高い。読売新聞は詳細な決算を公開していないので、実態はつかみにくい状態となっている。

 今後、紙の新聞が衰退することは確実であり、広告収入もさらに減少することが予想される。新聞社が今後も経営を続けていくためには、売上高と利益の減少に合わせて体質をスリム化し、縮小均衡を図っていく必要がある。その決断が出来るのか、またそれを実施するだけの経営余力を持っているのかが、新聞社の今後を左右することになるだろう。

体質のスリム化は必須
 日本の新聞は宅配という特殊なシステムを採用しており、この部分にかかる経費は大きい。社によってその水準は異なるが、一般に売上高の約20%程度の金額を販売や配送にかけている。全国に構築された販売網にはしがらみも多く、売上高の減少に合わせて簡単にリストラすることは難しい。今後、さらに部数の低迷が顕著になってきた場合には、販売店網の再構築が新聞社経営の焦点になってくるだろう。

 販売網のスリム化の次は、新聞社本体のスリム化が必要になってくる。新聞社は高給で知られており、朝日新聞と日経新聞の社員は40歳代前半で1300万円近い年収を得ている。だが、逆に考えれば、これはコスト削減余地が大きいことも意味している。当面の利益減少に対しては、給与の引き下げで対処し、社員数を徐々に減らしていけば、当分の間、利益体質を維持することが可能かもしれない。特に潤沢な資産を持つ朝日新聞は、不動産収益もあるので、かなり有利な立場にある。

 一方、すでに社員の年収が750万円円程度まで引き下げられている毎日新聞や産経新聞は、今後のコスト削減余地が小さい。また両社には目立った資産がなく、本業以外からの収益も少ない。今後、新聞離れがさらに加速すると、両社の経営は苦しくなるかもしれない。

 もっとも、有力なテレビ局をグループに持つ新聞社については、テレビ局との合併というウルトラCも理屈的には可能となる。米国とは異なり、日本の新聞社はしぶとく生き残る可能性が高いだろう。

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