電力自由化の本質

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 ソフトバンクが本格的に電力事業に参入することが明らかとなった。電力の小売りが完全自由化される2016年をメドに、家庭用電力の小売事業に参入する。同社はすでに7カ所の太陽光発電力を稼働させており、2014年2月17日には、同社グループでは最大規模となる兵庫県の太陽光発電所の稼働を開始した。

 日本の電力は1995年から一部自由化が始まっているが、基本的に地域独占の構造は変わっていない。現在は完全に規制下にある家庭用電力が自由化されれば、利用者の選択肢は広がり、場合によっては安い電力を利用できる利用者も出てくるだろう。
 だが電力の自由化が必ずしも電気料金の引き下げにつながるわけではないし、自由化に伴うデメリットもある。自由化が経済にどのような影響をもたらすのか、もっと国民的な議論が必要だ。

電気料金の自由化後は電話料金とのセット割引も
 ソフトバンクが2月に稼働を開始したのは、兵庫県にある「ソフトバンク高砂ソーラーパーク」。5万6000平方メートルの敷地に出力2900キロワットの太陽光発電システムを設置している。太陽光発電所は天候に左右されるので、おおよそ10%から15%程度の稼働率となることが多く、同発電所では年間約336万キロワットアワーの発電量を見込んでいる(一般家庭約900世帯分)。

 ソフトバンクはすでに7カ所の太陽光発電所を持ち、このほかにも風力発電所の建設を進める予定である。同社は現在のところ、大口需要家向け電力事業者としての参入だが、2016年の完全自由化のタイミングでこれらの電力を一般家庭向けに販売する予定である。

 同社グループはすでに通信事業者として多くの世帯と契約を行っている。電気料金が自由化されれば、携帯電話とのセット割引などが可能となるため、利用者によっては、安い料金で電力を利用できるようになる可能性がある。同社の場合、発電所のほとんどが太陽光なので、価格面よりも環境に優しいといった別の部分を強調した販売戦略を採用する可能性もあるだろう。

すでに日本の電力は一部自由化が始まっている
 かつて日本の電力は地域ごとに設立された電力会社が送配電一体で独占的に供給していた。しかし1995年から部分的な電力の自由化が始まり、一定の条件を満たす事業者は電力事業に参入することが可能となった。現在では大口を中心に一部の電気料金は自由化されている。現在消費される電力の55%が価格自由化の対象となっている。

 しかし小規模事業所や家庭向けの電気料金はまだ規制の対象となっているほか、送電網が地域電力会社の所有となっていることから、公平な競争が担保されないとの指摘がある。政府では電力システム改革法に基づき、2016年をメドに家庭用も含めて電力の小売を完全自由化し、2018年から2020年にかけて送配電の分離を実施したい考えだ。

 家庭向けの電力小売りが自由化され、送配電も分離されることになれば、原則として新規参入事業者に対する障壁はなくなる。価格を重視した安価な電力を売りにする電力会社や、逆に価格は高いものの再生可能エネルギーに特化し、地球に優しいことをアピールする電力会社など、様々な企業が登場してくる可能性がある。また料金プランも利用者のニーズに合わせたきめ細かいものが多数用意されることになるかもしれない。

 地域独占にあぐらをかいていた家庭用電力の分野に競争相手が出てくることは基本的に歓迎すべきことといってよいだろう。だが電力が自由化されたからといって、電気料金が単純に安くなると考えるのは早計だ。場合によっては電気料金が上昇する可能性も考えられる。

日本の電気料金は高いのだが・・・・
 現在の日本における家庭用電力の料金は1キロワットアワーあたり約30円となっており、諸外国に比べるとかなり高い。電気料金の計算は条件によっても異なるが、1キロワットアワー当たり30円というのは、日本の平均的な一般家庭における生活実感に近い水準である。
 一方、米国は平均約12円(米国は地域差が大きく、7円から25円までバラツキがある)、英国は23円、自然エネルギーを重視しもっとも高い部類に入るドイツでも26円程度である。


 従来の電気料金は、電力会社がコストを積み上げる総括原価方式によって算定されている。電力会社間には競争がないため、事実上、電力会社の言い値で電気料金が決定される。もっとも電力会社は過剰な利益を計上できないよう制限が課せられており、コスト積み上げといっても、電力会社が法外な利益を上げてきたわけではない。
 だが地域独占の立場を維持するため、下請け企業や地域への配分も含め、コストをあまり考えず事業を行ってきたのは事実である。基本的には競合の参入によって価格低下が期待されると考えてよいだろう。

 だが一方で、電気料金の2割を燃料代が占めているのも事実である。他の部分でコストダウンが可能であっても、燃料費が高騰すれば電気料金は跳ね上がる可能性もある。実際、諸外国で自由化を実施したところの多くが、燃料費の高騰によって逆に電気料金が上昇するという現象が起きている。

自由化のメリットは何か?
 一般に市場の自由化は、十分な競争環境が維持できるだけのプレーヤーが出揃って初めてその本質的な効果を発揮する。市場参加者が不十分なまま自由競争を行えば、当然デメリットの方が大きくなってしまう。

 また、料金の引き下げは、自由化がもたらすメリットのひとつではあるが、それがすべてではない。自由化を行う最大のメリットは、利用者における選択肢の確保であり、価格低下はその結果得られる果実の一つにしか過ぎないことを利用者はよく理解しておく必要がある。

 こうしたコンセンサスが得られないまま、拙速に自由化を進めれば、自由競争のメリットが利用者に理解されないまま、弊害だけが意識され、結果的に自由化そのものが頓挫してしまう可能性もある。電力は社会の基本的インフラであり、トラブルになった場合の影響は極めて大きい。プレーヤーの確保や国民への情報提供など、十分すぎるほどの時間をかけることが、結果的に自由化の成功につながるはずである。

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