収益を模索するネット・メディア

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 インターネットの世界では、スマホやタブレットの普及によって、利用者の裾野が拡大しWebサイトの閲覧数は増加している。一方でネット・メディアの主な収益源である広告の単価は減少の一途を辿っている(本誌記事「ネット経済の行方」参照)。

 新聞や雑誌といった紙媒体は衰退の一途を辿っており、ネットへの置き換えは今後さらに加速する可能性が高い。だが広告単価が下落するネットの世界では、コンテンツのコストを限りなく低くしなければビジネスとして成立させることができない。このため多くのネット・メディアが自らコンテンツを作成せず、他のサイトが作成したコンテンツを集めるビジネス・モデルを模索している。

 だがこの傾向はいつか行き詰まることになる。コンテンツの絶対量が足りないと、どのメディア・サイトを見ても、内容が同じになってしまうからである。一部のネット・メディアの中には、従来型の広告に見切りを付け、広告と記事の境目をなくした新しい広告について模索する動きも出てきた。

高まるニュース・アグリゲーターの存在感
 今、ネット系メディアの世界では、既存のニュースを収集・編集して利用者に再配信するニュース・アグリゲータ(ニュース収集サービス)の分野が非常にホットである。既存のニュースを収集・編集して再配信するサービスは、ヤフー・ニュースやグーグル・ニュースなどすでに一般的になっている。ヤフーのニュース欄はネットで最も読まれているニュース・コンテンツといってよいだろう。

 だが最近注目を集めているのは、こうした大手ポータルによるニュース・サービスではなく、独自のアルゴリズムでニュースを自動収集し、利用者の嗜好に合ったニュースを自動的に選別する新しいサービスである。こうしたサービスはWebサイトではなく、スマホやタブレットのアプリとして提供されるケースも多く、ツイッターやフェイスブックで話題になっているトピックスを自動的に追跡するなど、ソーシャルメディアとの親和性が高くなっている。

 メディアの再編が激しい米国では、既存の新聞社が自社サイトにおいて、自社記事に加えて外部のコンテンツも取り扱い、事実上のアグリゲータとなるなど、ドラスティックな動きも見られる。ニュースを選別し、一定のトレンドを作り出す存在として、アグリゲータの重要性は今後も高まってくる可能性が高い。

国内でもスマホ向けニュース・アプリが次々登場
 スマートニュース株式会社は2014年2月、同社が提供するニュース配信アプリ「SmartNews」のダウンロード数が300万を超えたと発表した。同社のアプリはツイッターの話題を一定のアルゴリズムで解析し、よくつぶやかれている話題を中心にニュースを自動配信する機能を持つ。自分が興味のある分野を登録すると関連ニュースを要約した上で自動配信する「vingow」(写真)や、Gunosy(グノシー)も同様のサービスに分類することができるだろう。

 経済などテーマを絞ったニュース配信に特化しているのが株式会社ユーザベースが提供する「NewsPicks」である。
 同サービスは、機械的なアルゴリズムだけでなく、アナリストや専門家など「人の目」を使ってニュースの選別を行っている。その意味ではヤフーなどポータル系のニュース・サービスと考え方は近い。

 機械的アルゴリズムに頼らず、人の目を重視するという考え方は、フェイスブックが2014年2月に発表したニュース・アプリ「Paper」でも採用されている。
 Paperのニュース選定は同社の編集者が行っており、友達の動向を知ることに重点が置かれている従来のサービスとは一線を画したものとなっている。利用者は機械的アルゴリズムで選択されたニュースと編集者が選択したニュースの両方を閲覧することになる。

日本の場合、コンテンツが少ないという問題も
 米国の場合、ハフィントン・ポストやビジネスインサイダーに代表されるような、自ら記事を作成して配信するネット専業のニュース・サイトが多数存在しているため、コンテンツには事欠かないという状況となっている。アグリゲータのサービスが多数登場しても、差別化を図ることは容易であり、ネット・コンテンツ全体の底上げを図ることが可能となっている。

 だが日本の場合、ネット上でコンテンツを提供しているサイトの多くは、有料の紙媒体を母体としている。紙媒体が母体の合、無料でコンテンツをネットで配信してしまうと、お金を払っている紙媒体読者との利益相反を起こしてしまう。このためネット上のコンテンツには制限を加える必要があり、十分な量のコンテンツをネットに提供できなくなってしまう。

 日本では独立したネット専業媒体は多くないことから、アグリゲータが集められるコンテンツには自ずと限界が生じる。このためアグリゲータが多数市場に参入しても、目にするコンテンツはどれも同じものばかりという状況が発生してしまう可能性がある。これは日本市場特有のリスクといえるかもしれない。


収益源として注目されるネイティブ広告
 もっとも米国がコンテンツに事欠かないといっても、独立系のネット・メディアが十分な収益を上げられているかというと必ずしもそうではない。政治や経済のニュースサイトは、スポーツや芸能など、一般的なニュースと比べて広告のクリック率が低く、どのようにして収益を確保するのか、各社、模索が続いている。

 このような状況で最近急浮上してきているのが、ネイティブ広告と呼ばれる新しいスタイルの広告である。ネイティブ広告とは、記事と広告の区別を曖昧にし、通常の記事であるかのような形で提供する広告のことを指す。米国の大手ネット・メディアがすでにネイティブ広告を導入しているほか、日本でも実験的にネイティブ広告を導入するメディアが出てきている。

 紙であれネットであれ、通常、広告は広告であることが一目で分かるような体裁になっている。しかしネイティブ広告は記事と同じフォーマットで提供されるため、読者は記事か広告かを一目で判別することが難しくなっている。ネイティブ広告は、通常の広告よりも読まれる確率が高いことから、広告主から高い広告料金を取ることが可能となる。

当然のことながら賛否両論も
 ネイティブ広告というキーワードを聞くと非常に新しいもののように思えるがそうでもない。
 実は日本のメディア業界には、昔からネイティブ広告と似たような形式の広告(記事体広告と呼ぶ)が存在している。雑誌や新聞において記事のような体裁であるにも関わらず、「広告特集」や「PR」といった文字が表示されているものがそれだ。
 ただ最近ネット上で模索されているネイティブ広告は、広告であることをより分かりにくくしており、既存の記事体広告よりもさらに記事に近い形態となっている。

 当然のことながらこうしたやり方には賛否両論がある。記事の体裁に近いネイティブ広告が増えてくれば、読者は広告なのか、客観性のある記事なのか判別しにくくなる。ネイティブ広告の掲載については、何らかの形で規制すべきという声は大きい。だが一方でまったく別の見方も存在している。

 読者はメディア側が考えているほど、広告と記事の違いを求めておらず、そこまで神経質になる必要はないという考え方である。実際、PRあるいは広告と表示した記事体広告については、広告であると認識している読者は思いのほか少ないというのが現実である。読者の多くは、自分の好き嫌いでコンテンツを評価しているのであって、広告かそうではないかで判断しているわけではない可能性が高いのだ。

リテラシーが高ければ問題ない?
 ネイティブ広告に賛成している人は、リテラシーの高い読者は、どんなに「偽装」しても広告と記事を峻別することは容易であり、記事に広告を紛れ込ませても何ら問題はないと主張している。

 ネイティブ広告が導入されれば、メディア企業は従来型の広告よりも圧倒的に多くの収益を得ることが可能となり、結果的に独自コンテンツも増え、最終的にはコンテンツの質も向上するかもしれない。だが一方で、広告はより狡猾になり、読者はそうとは知らずに広告から情報を得ることになってしまう。

 インターネットは本質的に、限界費用が限りなく少なくなるという特徴を持ち、その影響はコンテンツにもっとも顕著に現れる。継続的な広告単価の減少が見込まれる中、こうした新しい広告モデルに舵を切るのか、メディア企業の模索が続くことになる。

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