マーケットレビュー

ネット経済の行方

 短文投稿サイト「ツイッター」の業績をめぐり、米国の株式市場でちょっとしたショックがあった。
 同社の成長性を示す指標の一つである、タイムライン閲覧数が、前期比でマイナスとなり、2014年2月6日の株式市場において同社株が25%近くも下落したのだ。またSNS大手であるフェイスブックに関して、利用者数急減を予測する学術論文が出るなど、ソーシャル系メディアの成長性に疑問符が付き始めている。

 一方、先月末に発表されたインターネット検索大手グーグルの決算は絶好調であった。同社の主力事業である広告が大幅に伸び、四半期ベースでは売上高、利益とも過去最高となった。スマホの普及などネット利用者の裾野拡大を背景にクリック数が大幅に増加したことが主な要因である。
 
 もはやネットの基本インフラと化したグーグルは、従来型のネット広告とは非常に相性がよく、同社の経営は今のところ盤石に見える。だが一方で気になる兆候もある。クリック数が順調に伸びる一方、広告単価の下落が止まらないのである。広告単価の下落は、メディア系を中心とする他のネット企業の経営を苦しめることになる。特に、ソーシャル系メディアは従来型広告との相性が悪く、今後も収益化に苦しむ可能性が高い。

利用者数は伸びたものの閲覧数が減少
 ツイッターは、2013年10月に株式を上場したばかりであり、今回は上場後、初めての決算発表であった。同社の初値は45.10ドルと公開価格である26ドルを70%以上も上回っており、その後も、成長への期待から一時は70ドルを超えるまで買い進まれていた。

 だが2013年10~12月期の決算は、投資家の期待を裏切るものであった。この四半期の売上高は2億4300万ドル(約248億円)と前年同期比で倍増となったが、逆に純損失は5億1200万ドル(約522億円)と赤字幅が拡大した。同社は成長途上の会社であり、損失が拡大することについて市場がノーを突きつけたわけではない。最大の問題は、今後の成長に疑問符が付く指標が出てきたことである。

 同社の収益力を評価する主な基準となっているのは、月ごとの利用者数とタイムライン閲覧数である。同社は「つぶやき」と呼ばれる、最大140文字の短文をネットに投稿できるサービスが事業の中心だが、この画面は「タイムライン」と呼ばれている。タイムラインの閲覧数は一般的なWebサイトのページビューに近いものなので、この数字が多ければ多いほど、多額の広告収入が期待できる。

 同社の利用者数とタイムライン閲覧数は、これまで順調に伸びてきた。前四半期の利用者数は2億3200万人、タイムライン閲覧数は1480億回であった。この四半期の利用者数は2億4100万人と4%の伸びを示したが、タイムライン閲覧数は6.3%の減少となってしまった。利用者は増えたものの、ツイッター上で「つぶやく」回数は減ってしまったのだ(図1)。


SNSのサービスは今がピーク?
 タイムライン閲覧数の減少は初めてのことであり、今後も同じ傾向が続くのかどうかは今のところ不明である。しかし、ツイッターのサービスは飽きられるのも早いのではないかという警戒感があったことから、市場ではかなりシビアに解釈されているようだ。

 同じような問題はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手のフェイスブックにも当てはまる。フェイスブックも利用者の増加は続いているものの、利用者数の伸び率は、四半期ごとに鈍化が進んでいる。同社については若年層の利用者離れが進んでいるとの見方が出てきており、今後も成長を維持できるのか疑問視する向きもある。同社の利用者拡大は感染症の拡大とパターンが似ているとして、感染症シミュレーション・モデルを応用した利用者減少予測が出されるなど、同社の将来性に関する話題は尽きない。

 短期間で利用者数を伸ばし急拡大したソーシャル系メディアに対して、もはやネットのインフラ企業と化したグーグルは盤石の経営体質を誇っている。2014年1月30日に発表されたグーグルの決算は非常に良好なものであった。

グーグルの業績は過去最高水準
 2013年10~12月期における同社の売上高は前年同期比17%増の168億5800万ドル(約1兆7300億円)、純利益は同17%増の33億7600万ドル(約3470億円)となり、売上高、利益とも過去最高となった。同社の主力事業であるネット広告の伸びが著しく、全体の収益を押し上げた。

 同社は携帯電話メーカーのモトローラを2012年に買収したものの、中国企業であるレノボに売却することを決定している。同社には1兆円近くの損失が発生するが、5兆円近くの現金(それに類する金融商品)を保有し、1兆8000億円のキャッシュ・フローを持つ同社にとって影響は軽微だ。

 ただ好調な同社の決算も、その内容を詳しく見てみると、ネット経済全体にとってそれほど好ましい状況になっているわけではない。同社の収益の柱は、検索エンジンと連動させた検索連動型広告だが、以前から進んでいる広告単価の下落が一向に止まらないのである。

グーグルの増収はネットの裾野拡大を反映している
 同社の収益構造は意外と単純である。同社が提供する検索連動広告を利用者がクリックするたびに、広告料金の一部が同社に入ってくる。売上げを決定する要因は、クリック数(利用者が広告を閲覧した回数)とクリック単価(広告料金)であり、単純化すれば、この両者を掛け合わせることで同社の売上げが計算できる。


 これまで同社は増収増益を続けてきたが、それはクリック数増加の影響が大きい。検索を行った人の一定割合が広告をクリックすると仮定すると、同社における広告のクリック数は世界全体のネット閲覧数の代理変数と考えてよい。現在のネットの世界ではスマホ・シフトが進んでおり、利用者層の裾野拡大が示唆されている。

 この四半期における同社のクリック数は前期比で30%も増加した。またここ2年で同社のクリック数は1.8倍に増えている。この数値はここ2年間のネット・トラフィック量の増加とほぼ一致することから、同社はネット利用における裾野拡大をうまく取り込めていることがわかる(図2)。

多くのネット企業にとって未来はそれほど明るいものではない?
 だが、クリック数が増加する一方で、広告単価の減少は止まらない。今期は前期との比較で広告単価が10%ほど下落しているほか、ここ2年間での下落率は20%に達している。インフラ企業である同社はネット市場の拡大をそのまま取り込むことができる。クリック数の増大が広告単価の下落をはるかに上回っていることから、同社は増収増益を確保することができているわけだ。

 だが広告単価の減少は、市場で圧倒的なシェアを持つわけではない、他の一般的なネット企業にとっては、それほどよい話題ではない。インターネットの利用者数は今後も順調に増加することが予想されているが、ネットの利用が一般化すればするほど、ネットのコモディティ化が進み、それに伴って広告単価も下落が続く可能性が高い。

 圧倒的なシェアを確保できない一般的なメディア系ネット企業は、よほどのメガサイトでなければ生き残っていくことが難しくなるだろう。また、他人とのコミュニケーションに主眼が置かれているソーシャル系メディアの場合、従来型のネット広告とは相性が悪く、閲覧数あたりの収益が低い。メディア系のネット企業の中には、従来型広告をあきらめ、新しい広告収入源を模索する動きも始まっている(これについては次回以降で解説します)。