日本の財政をシミュレーションしてみると

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 内閣府は2014年1月20日、経済財政に関する中長期の試算を公表した。国際公約にもなっている2015年の基礎的財政収支赤字半減という目標は達成の道筋が見えてきた。だが2020年に黒字化というもうひとつの目標は今のところ達成が難しい状況だ。

 政府が一般的な財政収支ではなく、基礎的財政収支を重視するのには理由がある。利払いも含めた一般的な財政収支で議論してしまうと、政府債務が過大な日本の場合、財政黒字化の道筋を示すことが極めて困難なのである。また金利が急上昇した場合には、日本の財政が立ち行かなくなる可能性すらある。

 本誌は独自に2020年までの基礎的財政収支と一般的な財政収支の予測を行った。政府が見込んでいる経済成長が達成できた場合には、内閣府の試算通りに財政が推移する可能性が高い。だがゼロ成長が続き、金利が急騰するという最悪のケースでは、2020年の時点で財政が破綻する可能性もあることが分かった。

2020年基礎的財政収支黒字化は達成が困難
 基礎的財政収支はプライマリーバランスとも呼ばれており、利払いなど国債関連費用を除外した財政収支のことを指す。純粋に税収と政策経費の差額を示した指標ということになる。

 2010年における基礎的財政収支のGDP比はマイナス6.6%だったが、政府は2015年にこれを半減するという公約を掲げている。内閣府の試算における2015年の基礎的財政収支はマイナス14.5兆円となっており、GDP比ではマイナス3.2%となる。このままの推移が続けば、2010年との比較で半減という目標はとりあえず達成が可能ということになる。

 だが、2020年に基礎的財政収支を黒字化するというもう一つの目標は達成が困難な状況だ。試算における2020年の基礎的財政収支はマイナス10.1兆円、GDP比ではマイナス1.9%である(図1の赤の棒グラフ)。これは消費税を10%に増税することを前提にした数字なので、このままの状態では、消費税を増税したとしても、財政収支目標の達成は困難ということになる。


内閣府の試算は税収見込みが厳しすぎる?
 内閣府の試算は、名目3%、実質2%程度の経済成長が実現し、物価上昇率は2%で安定的に推移することが前提となっている。つまりアベノミクスの成功が大前提ということである。消費税については、予定通り10%に増税されることが既定路線となっているほか、社会保障費については高齢者人口の増加による段階的な増加を見込んでいる。

 本誌による試算でも内閣府と近い経済条件を前提にしており、2014年の名目成長率3.3%がそのまま継続するとした。また社会保障費も現在の給付水準を基準に高齢者人口の増加分によって金額が増えることを念頭に置いた。その他の政策経費は消費者物価指数の上昇に比例して増大するとした。

 図1の青い棒グラフは、本誌による試算結果である。財政収支のシミュレーションで重要になるのは税収の見込みなのだが、税収見込みを厳しくしたものと(濃い青)、楽観的にしたもの(薄い青)の2種類を用意した。
 グラフからわかるように税収を厳しめにした本誌の試算は内閣府の試算とほぼ同レベルとなっている。逆にいえば、内閣府の試算は税収見積りが厳しすぎる可能性がある。

前提条件を変えれば赤字幅半減も可能
 GDPが増加すると税収がどの程度増えるのかを示す指標に税収弾性値と呼ばれるものがある。政府は以前から、1.1程度というかなり低めの数値を使っている。今回の試算でも同様の低い数値を使った可能性が高い。

 だが過去の状況を検証してみると、税収弾性値はもっと高い時期も存在しており、低い数字に固定化してしまってよいのか議論の余地がある。税収弾性値を1.5程度と見積もった場合には、図1の薄い青のグラフで示したように、2020年における基礎的財政収支の赤字額は現在の見込みから半減させることができる。

 財政当局の最優先事項は財政再建であり、常に日本の財政は危機的状況にあるという説明をしがちである。内閣府の試算は、やはり少し厳しめであると考えるのが妥当だろう。

利払いを含めた財政収支の状況は厳しい
 だが、仮にこうした前提条件が過大であったとしても、日本の財政が厳しいという状況に変わりはない。本来は財政収支を議論する場合には、基礎的財政収支ではなく、利払いも含めた一般的な財政収支を用いることが望ましい。だが日本の政府債務水準は先進国でも突出しており、金利負担を含めて議論してしまうと、財政再建は不可能という結論にもなりかねない。

 政府としては、まずは利払いを考慮しない基礎的財政収支に焦点を当て、この基準での財政再建を進めつつ、最終的には、利払いも含めた財政収支の改善につなげたい考えだ。
 利払いも含めた一般的な財政収支は、内閣府の試算によると一時的には改善するが、2017年からは再び悪化に転じ、2020年にはマイナス50兆円を突破してしまう(図2の赤の棒グラフ)。2020年時点での税収見込みは70兆円程度だが、そのときの国債費は40兆円にも達する。税収の6割が利払いなどで消えてしまう計算だ。


最悪シナリオでは2020年に日本は財政破綻する
 だが内閣府の試算はあくまで経済が順調に成長することが前提となっているほか、金利については穏やかに上昇すると仮定されている。だが、最悪のケースとしてはデフレ時代と同様、経済のゼロ成長が続き、日本の財政に対する信認が低下して、金利が急騰するというシナリオがあり得る。

 本誌の試算では、2015年以降、経済のゼロ成長が続き、2020年の時点で金利が現在の3倍に上昇したと仮定すると、2020年の財政収支は80兆円の赤字となる(図2のオレンジの棒グラフ)。予想される税収は55兆円、国債の利払いは約46兆円となり、利払いが税収に迫ってくる。もし金利が4倍になったら、とうとう利払いが税収を上回ってしまう。

 利払いが税収を上回る状況となれば、日本国債を引き受ける投資家はいなくなり、最終的にはデフォルトになってしまう。あくまで最悪のシナリオだが、決してあり得ない話ではない。財政引き締めと持続的な経済成長、そして金利の低め誘導は、何としても実現しなければならない政策課題であることが分かる。

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