人口減少と日本の生産性

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 日本の人口減少が顕著になってきている。厚生労働省が発表した最新の人口動態統計によると、2013年における人口の自然減は24万4000人と過去最高を記録した。
 日本の人口減少はこれまで年数万人レベルだったが、2010年から減少数が急増、今後も減少数が増える見込みだ。毎年、地方都市がひとつずつ消滅していくようなものである。

 GDPを構成する2大要素は人口と資本である。人口の減少が見込まれる中、経済成長を維持していくためには、投資の継続と生産性の向上が重要となる。だが日本企業における労働生産性は国際的に見て低い水準にとどまっている。
 日本では生産性の低さについて、過剰な残業など働き方の問題であるとの認識が強い。確かにその面は否定できないが、生産性を下げている最大の要因は企業が生み出す付加価値の低さである。これが改善されないと、マクロ的な生産性は向上せず、継続的な経済成長も難しい。

生産性の低下は雇用とビジネスモデルの現状維持が原因
 生産面に限って言えば、日本における人口減少はすでにかなり前から始まっている。日本の就業者数が減少に転じたのは1997年のことであり、翌年には労働力人口も減少に転じている。生産に従事する人口が減ったにも関わらず、GDPは当時からほぼ横ばいが続いているが、これはわずかながら総人口の増加が2005年まで続き、消費の面では経済の持続力があったからである。

 だが総人口の減少が続くと、いずれ消費も減衰してくる。今後、一定の経済成長を維持しようと思ったら、生産性を向上させていく必要がある。だが日本企業の生産性はこのところ低下する一方だ。

 2012年における日本の労働生産性は約757万円であり、5年前の2007年と比較すると5%以上も低下している。一方米国の2012年の労働生産性は約11万4000ドル(約1185万円)となっており、同じ期間で15%以上も上昇している。
 2012年における日本の生産性ランキングは21位となっており、国際的に見てもかなり低い。日本企業の生産性が低いのは、雇用を最優先してきたことや、古いビジネスモデルから脱却できず、付加価値の向上が進まなかったからである。デフレが原因という指摘もあるが、デフレは価格下落という状況を説明しているだけにすぎない。価格が下落するのは、経済活動が活発でないからであり、最終的には付加価値が低い産業構造そのものに起因している可能性が高いといえる。

日本企業はひたすら貯金だけに励んできた
 こうした状況は日本企業の経営を俯瞰的に見ればより明らかになってくる。過去10年間の日本企業における利益率はほぼ横ばいとなっている。同じく配当も、従業員給与も横ばいであり、設備投資に至ってはマイナスが続いている。唯一、内部留保(現金・預金)だけが一貫して増加している(図1)。


 つまり日本企業は、この10年間、ほとんど変化らしい変化をしていないのだ。内部留保を再投資に回すこともせず、株主や従業員に利益還元することもなく、ひたすら貯金に励み、殻に閉じこもっている状態であった。

 企業が設備投資を拡大させず、従業員への給料も増やさなければ、消費や投資が拡大するはずがない。一方で、唯一支出を拡大させてきたのが政府ということになる。図2は1980年以降の各部門の資金の過不足を示したチャートである。以前は圧倒的に家計部門が資金余剰となっており、旺盛な設備投資から資金不足になっている企業部門に資金を提供する形となっていた。


 だが最近はこれが逆転しており、企業部門はむしろ資金余剰の状態にある。一方で家計の余剰は少なくなっており、もはや資金の出し手とはいえなくなりつつある。

もう一度構造改革の議論が必要
 このようにして眺めてみると、日本企業の生産性が低いのは、その硬直化した産業構造が原因である可能性が高い。ミクロ的な観点では、残業が多い日本企業の労働慣行など見直すべき点は多いが、マクロ的な視点においてはそういったことはあまり関係しない。
 時代に合わなくなった付加価値の低いビジネスモデルを維持している限り、全体的な生産性が上がる可能性は極めて低い。このような状態で公共事業を増やしたところで、一時的な需要で消えてしまうだろう。

 実はこうした議論は構造改革が真剣に議論されていた時代には、何度も行われてきたものである。だが日本は大きな変革を望まず、産業構造の転換を先送りしてきた。だが今後、人口の減少が加速してくることになると、生産性の低さがもたらす影響がより顕著になってくる。

 人口が増加している状況であれば、雇用維持を優先して生産性を下げるという選択肢も可能だったが、人口が減少する中で生産性を下げ続けると、経済のパイが加速度的に縮小する危険性があるのだ。日本はこれまで避けてきた産業構造の転換という問題にそろそろ本気で向き合わなければならない時期に来ている。

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