2014年度予算案は、バラマキに見えて実は財政再建を重視

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 政府は2013年12月24日、2014年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は95兆8823億円と過去最大規模となった。
 予算総額が膨張した最大の理由は、社会保障費と公共事業費の増加である。表面的には消費増税による景気落ち込みを下支えするため、大判振る舞いした形になっている。

 だが予算案の内容をよく吟味してみると、状況はもう少し複雑だ。確かに過去最大規模の予算額となってはいるが、実質的な公共事業はあまり伸びておらず、新規国債発行額も抑制されている。これが実現できたのは税収の見込みが大きく上振れしたからである。

 もっとも税収が増加した最大の要因は前年度の公共事業であり、これは持続可能なサイクルとはいえない。今回の予算案は景気対策と財政再建をギリギリのバランスで成り立たせたものと理解した方がよいだろう。

公共事業費はあまり増えていない
 一般会計の総額は95兆8823億円となり、2013年度を約3兆3000億円上回った。予算額が増えた最大の要因は、社会保障費と公共事業費の増加である。
 社会保障費は高齢化の進展で、前年度比約1兆4000億円増の30兆5175億円となった。公共事業費は6800億円増の5兆9685億円となっている。公共事業費が大幅に伸びていることから、各種報道では景気対策を優先したバラマキ予算と評価されているようである。

 だがこれにはちょっとした数字のカラクリがある。今回増えた公共事業費のほとんどは社会資本整備特会の一般会計化に伴うものであり、会計上の費目が入れ替わっただけである。この分を相殺すれば公共事業費だけが大幅に伸びたわけではないことが分かる。
 8月の概算要求の段階では、通常の要求額96兆円に加えて景気対策用の要望額3.5兆円が上乗せされ、総額で99兆円を超える金額が要求されていた。単純計算では景気対策用の要望額3.5兆円の大半を削った形となる。


政府支出総額で見れば予算は横ばい
 景気対策用の要望額の大半を削ったのは、補正予算を含めた政府支出の総額を2013年度と同水準に抑えることを最優先したからである。予算は単体で評価されることが多いが、予算が景気にどのような影響を与えるのかについては、前年度の補正予算を含めた、その年度に支出される予算の総額で考える必要がある。

 2013年度は、当初予算と前年度の補正予算を合わせて約103兆円の政府支出があった。これに対して2012年度の政府支出(当初予算と前年度第四次補正予算の合算)は93兆円しかない。2013年度は前年度より10兆円も政府支出が多く、これは2012年度の名目GDPの約2.1%に相当する。2013年度の実質GDP成長率は2.6%という高い水準だったが、GPDの2%を超える政府支出の増加があったことを考えれば、ある意味でこの結果は当然といえる。

 一方、2014年度の政府支出は、12月5日に閣議決定した5.5兆円の補正予算と今回閣議決定した来年度当初予算を合わせた約101兆円が予定されており、2013年度とほぼ同じ水準になる。当初予算だけの比較では大幅な歳出増となっているが、政府支出総額で見た場合、金額はむしろ減少しているのだ。つまり、他の要素が大きく伸びない限り、GPD成長も限定的となる可能性が高い。
 実際、政府が発表した経済成長見通しでは、2014年度における実質GDP成長率は1.4%にとどまっている。つまり、成長率が鈍化することはすでにある程度織り込み済みなのである。

プライマリーバランス目標を最優先
 もし2013年度と同水準の高い成長を実現したいということであれば、さらに数兆円の上積みが必要となるが、そうはならなかった。2014年度 の予算は、見かけ上、公共事業費の増額で大判振る舞いしたように見えて、実は前年度の歳出水準を上回らないように計画されたものであると考えるべきだ。

 今回、歳出を抑制したのは、当然のことながら財政問題を意識してのことである。政府は2020年までに基礎的財政収支を黒字にするという目標を掲げているが、現在の状況ではその達成は極めて困難である。
 少なくとも2015年度までに基礎的財政収支を2010年度の水準から半減させるという、もう一つの目標をクリアしなければ、市場から日本の財政再建は不可能という烙印を押される可能性がある。そのためには2014年度予算における基礎的財政収支の赤字は19兆円以内に抑制する必要が出てくる。

 本来であれば、この目標達成も難しいはずであったが、思わぬ助っ人が現れた。それは税収見込みの増加である。
 2014年度の税収見込みは、消費税率の引き上げや景気回復を背景とした法人税収の増加で約50兆円となった。これは2013年度と比較すると、6兆9000億円も多い。税収が伸びたことで新規国債の発行額についても今年度より1兆6000億円少ない41兆2500億円に抑制されることになった。

 財務省はこの税収見込みを軸に、かなり早い段階から、基礎的財政収支を19兆円以内に抑制するという線で予算額の調整を進めていた可能性が高い。
 10月には、財政制度等審議会において「4兆円の基礎的財政収支の改善を図る」という目標が確認され、麻生財務大臣からは予算膨張を牽制するコメントが出るようになった。

 11月に開かれた経済財政諮問会議では、民間議員が基礎的財政収支を少なくともマイナス19兆円程度にすべきであるという提言を出しているが、これも財務省の方針が大きく影響した可能性が高い。最終的な基礎的財政収支の赤字は18兆円となり、目標値を大幅に上回っている。

円安と追加緩和期待に依存
 実質的に予算額が引き締めになったことを考えると、懸念されるのは来年度の景気動向である。財政再建を優先させたために逆に景気が失速し、10%への消費増税が失敗するというのは財務省としてはもっとも避けたいシナリオである。
 来年は、日銀の量的緩和から1年が経過することから、日銀に対して追加緩和の期待がかかりやすい状況と考えられる。また米国が量的緩和の縮小を開始したことから、円安がさらに進行する可能性も高まってきた。

 好調な米国経済を背景に米国向け輸出が増加し、これに円安と追加緩和が加われば、政府支出が横ばいであっても、来年いっぱいは何とか景気を持たせられる。財務省ではそのように踏んでいるのかもしれない。そうだとすると、景気対策と財政再建で本当に板挟みとなるのは、消費税が10%に増税された再来年度以降のことになる。

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