世界経済に成長鈍化の兆し

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 世界経済が成長鈍化の傾向を見せ始めている。OECD(経済協力開発機構)は2013年11月19日、最新の世界経済見通しを発表したが、2013年における全世界のGDP成長率はプラス2.7%と前回から0.4ポイントの下方修正となった。IMFが10月に出した成長予測でも2013年の成長はプラス2.9%に下方修正されている。

 成長が鈍化した最大の要因は、新興国の失速と欧州のデフレ懸念である。
 新興国はプラス5.1%と前年を0.4ポイント下回る予想となっており、欧州はプラス0.5%と停滞が続く。唯一好調なのは米国で2013年はプラス1.7%、2014年はプラス2.9%の成長を見込んでいる。

 米国がいくら好調でも、先進国の成長力には限界がある。成熟国家である米国に依存する構造が続くことから、全世界的に成長スピードが鈍化する可能性が高い。期待されるのは新興国の成長力回復だが、現実的には難しい。というのも新興国の成長鈍化は貯蓄過剰という構造的要因が大きく影響しているからである。

新興国の成長鈍化が鮮明に
 ここ10年間の世界的な経済成長のエンジンは新興国であった。特に中国とインドの成長はめざましく、過去10年の平均成長率は中国が10.3%、インドが7.3%となっている。新興国が生産を急拡大し、米国の旺盛な消費がそれを支えた。米国の富は新興国に再投資され、新興国の資金需要を満たすという好循環が成立していたのである。

 先進国に比べ、リーマンショックの影響が小さいと思われていた新興国だが、このところ減速傾向が顕著になっている。中国は7.5%成長を政府目標としているが、来年以降は、それを下回る可能性も出てきている。ちなみにOECDでは中国当局による景気対策の実施を見込んでおり、2013年は8.0%、2014年は7.8%を予想しているが、2015年には7.4%に再び減速するとしている。

 途上国はそのめざしい成長ぶりから、大きな期待が寄せられていたが、世界経済に占めるボリュームは実はそれほど大きくない。2012年の全世界のGDPは7200兆円程度だが、このうち先進国が約6割を占めている。新興国は4割程度しかなく、新興国が成長のエンジンとなるためには、よほど高い成長率がないと難しいというのが現状なのだ。

過去10年の成長を支えた要因
 だが新興国の急激な成長が構造的要因で停滞する可能性が高まってきている。図1は世界の総人口とGDPの推移を示したチャートである。一般的に経済成長は資本投入と労働投入で決まり、これで説明できない差分はイノベーションであると理解されている。つまり人口の増加は経済成長の大きなファクターということになる。


 この20年で世界の人口は1.6倍になっているが、同期間における世界のGDPは約7倍になっている。1980年から2002年頃までは、人口の伸びとGDPの伸びに大きな差は見られなかったが、それ以降のGDPの伸びは著しい。

 だがこのGDPの急激な伸びが、新興国の人口増加によって達成されているのかというとそうでもない。新興国の人口の伸びは、ほぼ横ばいが続く先進国に比べれば大きいが、2002年以降の急激なGDPの伸びを説明できるほどではない。これには別の要因が影響している可能性が高い。

新興国のインフラ投資が原動力になっていた
 新興国の成長が人口の伸びによるものではないとすると、次に考えられるのは投資の拡大である。図2はGDP成長における投資の割合と、GDPに対する世界貿易の割合を示したチャートである。

 GDP成長における投資の割合は、先進国では横ばいかマイナスが続いているが、新興国では2000年を前後を境に急激に増加を見せている。またこれに合わせるように世界のGDPに対する貿易の割合も増加している。このチャートを見る限り、新興国における積極的なインフラ投資がここ10年の成長のエンジンであったことが推定される。

 実際、中国のGDP成長における投資の割合は、ここ10年の間、45%もの高水準で推移していた。日本のGDP成長のうち投資が占める割合は20%程度なので、中国をはじめとする新興国がいかに投資に依存していたかが分かる。
 新興国における投資は、新規のインフラ建設や工場の設備投資が中心であり、関連する建設機器や素材、原材料などの輸出入を拡大させる。2000年以降、世界のGDPに対する貿易の割合が急上昇したのも、新興国のインフラ投資が原動力となっていた可能性が高い。


世界は貯蓄過剰の状態に?
 だが図2を見ても分かるように、リーマンショックを境にして、貿易のトレンドは完全に変化し、逆に割合の低下が進んでいる。これは新興国のインフラ建設が一段落し、輸出入が減少したことが影響していると考えられる。GDP成長における投資の割合はまだ顕著な下落は見せていないが、貿易の低下が先行指標なのだとすると、新興国の投資も一段落となる可能性が高い。

 要するに世界には新興国も含めて投資する先がなくなっている可能性が高いのだ。これは言い換えれば貯蓄過剰ということでもある。このような状態で、今後の成長を担うことができるのは、先進国による個人消費ということになる。
 だが先進国の中で、順調な回復を見せているのは米国だけである。米国は移民の割合が高く、人口構成が若い。またGoogleやAppleなどイノベーションをベースにした企業も多く、最近ではシェールガス革命によってエネルギー輸出も可能となっている。GDPの成長要因のうち労働投入とイノベーションに恵まれており、長期的な成長が期待できるといってよいだろう。

 一方で欧州は金利の低下が進んでおり、長期的な停滞を示唆する状況となっている。経済のボリュームが大きい中国は、経済の先進国化であるリコノミクス(李克強首相による経済改革)を進めているが、国内の反対世論も大きく、効果を発揮するのかは未知数だ。
 世界経済の高い成長を、成熟化した先進国の個人消費に頼ることには限界がある。最終的に貯蓄過剰の状態を解消し、再び世界経済を堅調な成長軌道に載せるには、アフリカや中東など、さらに新しいフロンティアの出現が必要となるだろうが、それまでにはしばらく時間がかかるだろう。

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