IMFの最新経済見通し。進む新興国から米国へのシフト

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 IMF(国際通貨基金)は10月8日、最新の世界経済見通しを発表した。前回7月の予測ではプラス3.1%としていた2013年の世界経済成長見通しをプラス2.9%に下方修正した。
 先進国の成長率は横ばいでプラス1.2%のままだが、新興国の成長率は0.5ポイント引き下げ、プラス5.0%とした。新興国の成長が鈍化したことで、全体の成長率見通しが低下した。

 新興国の成長鈍化の背景にあるのは、米国の景気回復とそれにともなう資金の流出である。FRB(連邦準備制度理事会)が量的緩和縮小の準備に入っていることも、資金流出に拍車をかけている。

 IMFでは新興国の経済は「景気循環的、構造的理由を背景にここ数年の高い水準に達することはない」と見ており、世界経済の牽引役は米国に移っていると指摘した。ただ今回の予想は米国の債務上限引き上げ問題が17日までに処理されることを前提としており、米国が一時的であっても債務不履行に陥る事態になれば、さらに下方修正となる可能性がある。

世界経済は米国経済に大きく依存
 今回の経済成長見通しではっきりしたことは、世界経済の成長ドライバーが新興国から先進国にシフトしていることである。国別の成長率見通しは、米国がプラス1.6%(0.1ポイント引き下げ)、日本がプラス2.0%(0.1ポイント引き下げ)、ユーロ圏はマイナス0.4%(0.1ポイント引き上げ)となった(図1)。

 ユーロ圏は全体ではまだマイナスだが、ドイツは0.2ポイント上方修正されプラス0.5%に、フランスは0.3ポイント上方修正されプラス0.2%になった。

 英国は0.5ポイントと大幅な上方修正となりプラス1.4%となった。スペインなど債務国は依然としてマイナス成長だが、マイナス幅は確実に縮小傾向となっている。

 日本は大型の公共事業の影響が大きいことや、来年は消費税の増税などで景気の下振れが懸念されている。欧州はようやく底を脱したタイミングであり、まだ完全な状況とはいえない。
 結局のところ、旺盛な個人消費が続く米国経済に全世界が依存する構図がより鮮明となっている。

 一方、新興国の状況は冴えない。中国は0.2ポイントの下方修正でプラス7.6%となり、政府目標をギリギリで上回った。ロシアはプラス1.5%と前回から1.0ポイントの大幅下方修正となった。新興国の低迷は今後しばらく続くことになるだろう。


欧州は問題解決とはほど遠いが、循環的には回復局面
 世界経済を米国が主導する構図は、各国の景況感指数にも表れている。米供給管理協会(ISM)が発表した9月の製造業景気指数は前月から0.5ポイント上昇し56.2となった。

 米国はリーマンショック以降も、旺盛な個人消費に支えられ、サービス業は順調な回復ぶりを示してきた。だが欧州の景気低迷が長引いていたことや、中国経済が失速したことなどから、製造業の景況感は低迷が続いてきた。2012年以降、製造業の指数は景気判断の境目となる50前後を行き来することが多かった。
 だが2013年の6月あたりからこの状況が大きく変わり始めた。製造業の指数が上昇に転じたのである。その主な要因は欧州景気に底入れの兆しが見えてきたことである。

 欧州向け輸出を楽観視する米国企業の経営者が増え、設備投資が増加したことで、景況感が上向き始めた。ユーロ圏における2013年4~6月期のGDP成長率は0.3%となり年率換算では1.1%の増加となった。プラス成長になるのは7四半期ぶりのことだが、この頃を境に欧州と米国の景況感も大きく変化している。中国は米国に支えられ何とか50の境目を維持している状況だ(図2)。


 欧州の景気低迷の元凶となっている債務問題は、根本的にはまったく解決しておらず、ギリシャなど債務国への追加支援は必須と認識されている。だがマイナス成長も永遠に続くわけではない。財政面はともかく循環的な側面では、欧州は景気回復のフェーズに入っているといってよいだろう。

最大の懸念は中国経済の崩壊
 世界経済における今後の懸念材料としてIMFは、米国の債務上限問題や中国のさらなる景気失速を指摘している。米国の債務上限問題は、あくまで政治的な駆け引きであり、実際に米国の財政が逼迫しているわけではない。仮に与野党の合意が得られなかったとしても、世界経済が深刻な状況に陥る可能性は低い。むしろ、中国のシャドーバンキング問題の方が潜在的なインパクトは大きいだろう。

 中国政府のシンクタンクである社会科学院は10月9日、中国経済における「影の銀行(シャドーバンキング)」の規模が20.5兆元(約328兆円)に達している可能性があることを明らかにした。公式データを元にしたシャドーバンキングの規模は14.6兆元(約234兆円)、市場データからの推定では20.5兆元に達するとしている。

 本誌は以前、中国バブル崩壊の可能性とその規模について試算した(本誌記事「中国バブルの崩壊時期と不良債権額を予測する」参照)。そこではシャドーバンキングの規模を約19兆元としていたが、社会科学院が発表した推定値もほぼ同額であった。

 中国の銀行融資残高は約68兆元(約1080兆円)なので、シャドーバンキングを合わせた融資総額は90兆円近くになる。これは中国のGDPの1.8倍近くの水準である。
 日本のバブル崩壊や米国のリーマンショックは、過剰融資を含めた総融資残高がGDPの1.5倍から1.6倍の水準を超えた段階で発生した。この考え方でいくと中国経済のバブルはいつ崩壊してもおかしくないことになる。

日本は来年以降、景気が失速
 ただ中国の場合には、自由市場を原則とする日米とは経済構造が大きく異なっている。中国経済は国家による統制が可能であり、場合によっては強権的な市場安定策や不良債権処理も実施できる。ただ、中国経済がクラッシュを避けられたとしても、現時点からさらに景気が後退する可能性は十分に考えられる。IMFも中国のGDP成長率が政府目標である7.5%を下回る可能性が高いと指摘している。
 
 日本については、財政出動などの効果から景気は回復しているものの、財政引き締めが行われる2014年以降には再び失速するとしている。IMFの予測には、現在、議論が進んでいる消費税に対応した経済対策の数字は盛り込まれていない。5兆円の経済対策がまとまり、来年度予算も大型のものになれば、数値は上方修正される可能性がある。ただ、IMFでは、日本の景気は財政支出に依存しており、潜在的な成長率は低い状態にあると見ている。長期的な成長を実現するには構造改革が必要と指摘している。

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