2014年度概算要求は100兆円超。中身は消費増税後の景気対策

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 2014年度予算の概算要求が8月31日まとまった。一般会計は昨年度を6兆6000億円上回る99兆2500億円となり、東日本大震災の復興費用を加えると100兆円を突破する大型要求となった。

 今回の概算要求は、年金・医療などの支出が1兆円増加したのに加えて「新しい日本のための優先課題推進枠」と名付けられた事実上の景気対策費用3.5兆円が上乗せされた。また国債の利払い・償還費用も3兆円増加しており、支出増大が目立つ。

 財務省では9月から予算査定を本格化させるが、霞ヶ関では来年の通常国会に提出する補正予算に話題の中心が移っている。
 来年度は景気の落ち込みが確実視されており、これに消費税増税が加わるとダブルパンチになってしまう。景気の落ち込みを最小限にとどめるため、昨年に引き続いて大型の補正予算を組む必要に迫られている。消費税増税を最優先したい財務省は、大型の予算編成を当面の間、黙認する構えだ。

通常の概算要求枠に加え特別の「要望枠」をプラス
 今年の予算編成は消費税の増税が最終決定していないことから、変則的な手法で進められている。予算には各省の裁量で増減が可能な裁量的経費と年金など支出があらかじめ決まっている義務的経費の2つがある。このうち、裁量経費については、消費税の増税がない場合に備えて前年の9割に抑えることが概算要求基準の中で定められた。

 一方で消費税が増税になった場合には財源が増えるため予算を増額することが可能となる。この部分については正式な予算要求とは別に「要望枠」という扱いとした。この要望枠は「新しい日本のための優先課題推進枠」と名付けられており、事実上、消費増税の影響を軽減するためのバラマキ費用である。

 この要望枠については各省とも制限一杯まで要望してきているが、裁量経費の割合が高い府省ほど、この枠を多く積み上げることができる。要求総額に対する要望枠の割合が高いのは、国交省、経産省、農林水産省などであり、公共事業や景気対策という色合いが強い事が分かる。

大型予算になった理由は景気失速対策
 各省の概算要求の総額は70兆4530円となり、昨年度とほぼ同額となった。年金・医療などの義務的経費が増加したことで裁量経費の削減分とほぼ相殺された形だ。要望額は3兆5177億円となり、要求額と要望額を合わせた総額は73兆9707億円となり、昨年度よりも3兆6007億円増加した(図1)。


 これに加えて今年の概算要求では国債関連費用の伸びが目立つ。国債費は前年比で3兆377億円増加した。内訳は、償還費用が約2兆円増、利払い費が約1兆円増である。だが、金利の上昇がジワジワと始まっており、来年度以降はさらに利払い負担が大きくなる可能性がある。各省からの要求・要望額に国債費を加えた最終的な要求額は99兆2500億円となり、昨年度より6兆6384億円の増加となった。

 この数字に震災関連の復興予算3兆6377億円が加わるため、最終的な要求額は100兆円を超える。100兆円を超えるのは2年連続であり、査定の結果にもよるが、大型の予算編成が続くことになる。
 財務省は9月から各省との折衝を開始しており、予算費目ごとに細かい査定が行われることになる。だが今回の予算査定では要望枠を含めて多くの予算が認められる可能性が高い。それは消費税増税後の景気の落ち込みを最小限に防ぐためである。

周到に準備された4~6月期GDPの上方修正
 まもなく安倍政権は消費税増税の最終判断を行うが、そのもっとも重要な判断材料となるのが4~6月期のGDP(国内総生産)である。内閣府が9月9日に発表した改定値では、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%増、年率換算で3.8%増になり、速報値から大幅な上方修正となった。

 だがこの良好な4~6月期GDPには多少のカラクリがある。今回の上方修正は、企業の設備投資というよりも、昨年度の補正予算による大型公共事業の効果が大きいのである。速報値の段階では1.8%増だった公共事業は改定値では3.0%増に改訂された。補正予算成立は2013年3月であり、実際に公共事業が執行されるのは4~6月期以降である。ちょうどこのタイミングで公共事業の数字がGDPとして顕在化してくるようになっているのだ。

 また民間の設備投資も改定値では1.3%増と大きく増加した。だが民間設備投資の基礎データである法人企業統計を見ると、民間設備投資で伸びが大きいのは不動産と建設となっている。今回のGPD上振れの多くは、大型の公共事業(2012年度補正予算を用いた総事業費20兆円の緊急経済対策)と、消費増税を前にした住宅の駆け込み需要で支えられているのだ。

 つまり、この数字は補正予算の効果が切れる来年には、景気が大きく落ち込むことを示唆している。消費税増税後に大幅に景気が落ち込むことになると、政権基盤にもかかわってくるばかりでなく、2015年に予定されている消費税10%への増税にも影響してしまう。来年度についても、今の景気を維持しておく必要があるのだ。

課題となる財源にはウルトラCも
 そのためには今年も大型の予算を組み、さらに、来年の通常国会に提出する補正予算でもそれなりの金額を積み増しておく必要がある。霞ヶ関ではすでに補正予算の金額をいくらにするのかに焦点が移り始めている。安倍政権が成長戦略として減税を掲げていることから、消費税対策は減税策とセットで実施される可能性もある。

 2013年度は補正予算や財政投融資なども含めて約102兆円程度の支出を行っている。今回の概算要求がそのまま政府案になったと仮定すると、2013年度と同レベルの政府支出を維持するためには、さらに8兆円程度の追加支出が必要となる計算だ。国債増発への警戒感が強いことを考えると、数兆円程度の補正予算、あるいはそれに変わる減税措置が検討される可能性が高い。

 問題は財源だが、財務省にはウルトラCがある。特別会計の決算剰余金である。特別会計上の決算剰余金は毎年10兆円程度出ているが、多くは翌年度への繰り入れに回されている。一時的に一般会計への繰り入れを増額させることで、ある程度の財源を確保することが可能である。
 
 現在の景気回復は多分に公共事業への依存度が高い。たとえそうであっても景気回復という事実をもって予定通り増税を行っていくべきなのか、まやかしの景気回復と捉えるのべきなのかについては様々な見解があるだろう。だがそうした議論をよそに、霞ヶ関では増税を前提にしたスケジュールが着々と組まれている。

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