中国バブルの崩壊時期と不良債権額を予測する

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 中国経済のバブル崩壊懸念がくすぶり続けている。特に問題となっているのはシャドーバンキングと呼ばれる通常の銀行以外の融資である。その中の一部は不良債権化しているといわれており、中国経済の時限爆弾となっている。

 だが中国政府は、場合によってはハードランディングも辞さない構えなのか、このような状況にあっても景気対策をほとんど打ち出していない。政府当局の真意は不明だが、中国にとっては日本のバブル崩壊と米国のリーマンショックという二つの前例が存在している。中国はこの二つの事例を参考に、政府のコントロール下において、クラッシュを起こさずに不良債権処理を進める方針なのかもしれない。

 果たして中国の統制されたバブル処理は可能なのか?また不良債権はどの程度の規模があるのか?日本のバブル崩壊と米国のリーマンショックの事例を参考に、中国バブルの危険度や崩壊タイミング、さらには現時点での不良債権額などを大胆に予測してみた。

中国経済の実態は官製の不動産バブル
 中国のバブルは官製バブルという面が強い。中国は10%超という驚異的な経済成長を10年も続けてきたが、その多くは公共事業を呼び水とした内需によってもたらされてきた。中国の過去10年におけるGDPに占める固定資本形成(インフラ建設)の割合は40%を超えている。日本でも、列島改造論に湧いた1970年代には固定資本形成がGDPの40%に近付いた時期があった。だが高度成長期においてもほとんどが30%台前半であったことを考えると、中国のインフラ建設はかなり過剰といえる。

 建設対象が、産業や生活に必要な橋や道路にとどまっているうちはそれでもよかった。だが最近では地方政府が金融機関から融資を受け、宅地を開発して国民に販売し利益を得るという動きが加速している。これは完全に不動産デベロッパー業務であり、不動産市況が冷え込んだ今、地方政府の中には資金を投じて開発したものの不動産を売却できず立ち往生しているところも多いという。しかもこうしたプロジェクトには、銀行の正規融資以外のルートからの資金も多く流れ込んでいる。シャドーバンキング問題が中国バブル崩壊の引き金となるとの懸念はこうした事情からきている。

 またシャドーバンキングの中には、共産党幹部の不正蓄財と関連した融資も多く含まれているという。中国政府がハードランディングを覚悟してまでも、シャドーバンキングに対して厳しい姿勢で臨んでいるのは、特権階級に対する国民の不満が高まっており、この問題を解決することは、景気対策よりもはるかに重要であると党指導部が認識しているからである。

バブルが崩壊するタイミングや規模は各国共通
 それでは中国のバブルは実際どの程度危ないのだろうか?すでに世界は、日本のバブル崩壊と米国のリーマンショックという二つの大きなバブル処理を経験しているので、バブルの生成と崩壊に関してはある程度の経験則がある。中国は情報の透明性が低いので、日本や米国とは多少状況が異なるが、おおまかな推計は可能だ。

 図1は日本のバブル崩壊と米国のリーマンショック、そして現在の中国バブルを比較したものである。日本のバブルは金融機関による商業用不動産に対する過剰融資が主な原因となっていた。日本はノンバンクが過剰融資しただけでなく、長信銀という格付けの高い銀行までもが危険な融資を行うなど、米国や中国よりもかなり悪質な状況だったといえる。
 日本のバブルが崩壊した1991年前後(株価のピークは89年だが本格的な危機は91年前後に顕在化した)の融資残高(金融機関とノンバンクを合わせた数字)は約785兆円であった。当時のGDPは474兆円なので、融資残高はGDPの1.65倍の規模に達していたことになる。

 
 一方米国は、商業用不動産ではなく、サブプライムローンと呼ばれる信用力が低い低所得者向け住宅ローンの過剰融資がバブルの原因となった。リーマンショックが発生する前年の2007年、米国の総融資残高は約22兆ドル(銀行融資にサブプライムローンやその他の融資を加えた数字)であった。当時のGDPは14.5兆ドルだったので、融資残高はGDPの1.51倍の規模ということになる。

 日本と米国ではバブル生成の過程も崩壊のきっかけも異なるが、不思議なことに、バブルが崩壊するマクロ経済な水準というのは、ほぼ一致しているのだ。融資残高がGDPの1.5倍~1.6倍を超えてくると危険信号というわけだ。

中国の不良債権は約180兆円と推計される
 日本と米国では不良債権の割合もほぼ同じであった。日本は不良債権処理にほぼ100兆円を、米国では3兆ドルを費やした。この金額の総融資残高に占める割合は、日本が12.7%、米国が13.6%である。バブルの後始末を実施するためには、一般的に融資残高の12~13%の金額を不良債権処理に充当する必要があると解釈できる。

 この数字を現在の中国にあてはめてみよう。現時点での中国の金融機関による融資残高は約68兆元(約1081兆円)ある。これは銀行による正規の融資であり、いわゆるシャドーバンキングによる融資が加わることになる。シャドーバンキングの規模は明らかになっていないが、国際協力銀行の渡辺副総裁は100兆円(6.3兆元)弱であるとの見方を示している。だが市場関係者からは、もっと大きな規模に達していると指摘する声も出ており、300兆円(18.9兆元)という数字も取り沙汰されている。ここでは多く見積もって300兆円(18.9兆元)の規模があると仮定する。

 正規の融資にシャドーバンキングの融資を加えた中国の融資残高は約87兆元(約1383兆円)ということになる。中国における2012年のGDPは52兆元(約827兆円)だったので、融資残高のGDP比率は1.67倍になる。もしこの数字が正しいとすると、日本や米国がバブル崩壊を起こした時と同じ水準であり、中国はいつバブル崩壊となってもおかしくないということになる。同様に不良債権の額を推定すると、11.3兆元(約180兆円)と計算される。

中国はクラッシュを回避可能?
 米国や日本は、原則として経済活動の自由が保障されている。このためバブルが崩壊しそうだという状況になると、投資家や金融機関は自らの資産を守るべく利己的に動いてしまう。このため、最終的にはそれほどの損害にならない状況であっても、とりあえず問答無用で資金を引き揚げるといった行動に陥りがちだ。これが一種のパニックを引き起こし、株価や不動産価格の暴落を招く。

 だが中国は法の支配が徹底しておらず、中国共産党はいざという時には財産権などを無視した強権発動が可能である。共産党の意向を受けた中国政府が、一方では十分な不良債権処理費用を用意し、一方では取引の強制停止や監査の強要を行えば、大きな混乱を起こすことなく、とりあえずの緊急対策を実行することができる。
 
 だが中国は対外的な市場の透明性が十分に確保されていない。金融避難的な対応は可能であっても、それが市場の本格的な信頼回復につながるかはまた別問題である。このことは米国と日本の比較からも明らかである。
 米国は日本に比べて透明性が高いが経済活動の自由度も高い。このためリーマンショック直後は、一時パニック的な状況に陥ったが、すぐに市場メカニズムが作用して不良債権の処理が進んでいった。一方日本は米国に比べると市場の透明性が低い。このため金融機関がどの程度不良債権を持っているのかなかなか明らかにならず、不良債権の処理に10年を要した。

 中国市場の透明性は当時の日本よりもさらに低い。すべての不良債権が透明化され、諸外国も含めて市場に対する安心感が出てくるまでには、日本と同様あるいはそれ以上の時間がかかることになるかもしれない。

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