勝者が消えたスマホ戦争

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 米国では4月~6月期決算の発表が相次いでおり、IT関連企業の決算もほぼ出揃った。
 ここ1~2年パソコンからスマホやタブレットへの移行が急速に進み、各社はその対応に追われていたが、スマホ・シフトに対して十分な対策を取れているとは言い難い。スマホ・シフトは基本的に各社の業績を下振れさせる方向に動いている。

 直接的な影響を受けるソフトウェア・メーカーやデバイス・メーカーだけでなく、ネット広告環境の変化によってGoogleの売上げにも鈍化の兆しが見え始めている。スマホ・シフトの最大の勝ち組であったAppleもすでに利益率の低下が顕著だ。良好な決算を維持しているのは、携帯電話仕様のオープン化で、スマホ業界のインテルになりつつあるクアルコムくらいとなっている。
 株価はすでにこうした状況をすべて織り込んでおり、IT銘柄は高成長に期待するものではなく安定的な投資対象に変化しつつある。

まだ方向性を見いだせないインテルとマイクロソフト
 スマホ・シフトの影響をもっとも大きく受けたのは、パソコンへの依存度が高いインテルとマイクロソフトの2社である。
 インテルの4~6月期決算は、売上高が前年同期比5.1%減の128億1100万ドル(約1兆2750億円)、純利益は20億ドルで前年同期比29.0%減となった。主力のパソコン向けCPUが伸び悩んだことが減収減益の主な原因。同社の減収減益は4四半期連続となり、スマホへの対応がなかなか進まない状況が明らかにとなった。同社は2013年通期の予想を横ばいに修正するとともに、収益性の指標となる粗利益の見通しも60%から59%に引き下げた。

 一方、マイクロソフトは、売上高が前年同期比10%増の198億9600万ドル(約2兆円)、純利益は49億6500万ドルと堅調だった。Officeなど業務用ソフトが好調だったことや、前年同期は買収企業の減損による赤字決算だったことから、純利益は大幅増となっている。ただ部門別の数字を見ると必ずしも順調ではないことがわかる。Officeなどの業務ソフトやサーバーなど法人向けの部門は増収増益となっているが、Winodw部門の売上げはわずか6%増で、利益は50%以上減少している。パソコンからタブレットやスマホに顧客が流れていることが響いた。

 同社は危機感を募らせており、7月11日にはこれまでにない大規模な組織再編を行うことを発表した(写真)。従来、Winodws部門、Xbox部門など、製品ごとに縦割りとなっていた組織を抜本的に見直し、OS部門、アプリケーション部門といったように、製品の機能区分ごとの組織にあらためる。新しいOS部門は、パソコン向けのOSからスマホ用のOS、さらにはクラウドサービスのOSまですべてを統括することになる。


とうとうGoogleの売上げも鈍化するのか?
 ハードウェアとは直接関連しないネット企業もスマホ・シフトの影響を受けている。スマホの広告単価が安く、全体の広告単価の下落が止まらないのである。
 グーグルの決算は、売上高が前年同期比19%増の141億500万ドル(約1兆4161 億円)、純利益は同16%増の32億2800万ドル(約3241億円)と見かけ上は好調だ。
 
 同社が取り扱う広告のクリック数は前年同期比で24%増加した。スマホやタブレットなどモバイル機器からの広告アクセスが増加していることが主な要因である。だが同社のクリック単価は2011年4~6月期をピークに下落が続いており、今期のクリック単価も前年同月比で7%下落した。クリック数の総数が増加しているので売上増を維持しているが、これ以上単価の下落が続くと同社の成長も鈍化する可能性がある。

 業績が低迷しているYahooは、昨年7月に就任したGoogle出身のマリッサ・メイヤー最高経営責任者(CEO)のもと、体質転換を図っている。同社は2013年3月にニュース要約アプリ「Summly」を、続いて5月にはブログとSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を手掛ける「Tumblr(タンブラー)」を買収し、若年層を中心とした新しいユーザー層の開拓を進めている。だが今期の決算や通期の見通しを見る限りこれらの効果は表れていない。

アップルが以前の利益率に戻ることは困難
 スマホ・シフトの火付け役であるアップルもすでに利益率の低下が始まっている。同社の売上高は353億2300万ドル(約3兆5146億円)で前年同期比0.9%の増加にとどまった。一方、営業利益は92億100万ドル(約9155億円)で20.5%減、純利益は69億ドル(約6866億円)で、こちらも21.8%の減少だ。


 主力のiPhoneの販売自体は順調だ。今四半期は3120万台を売上げ、前年同期比で20%も増加した(ただしiPadの販売台数は16.4%減少、Macの販売台数も5%減となった)。
 だが同社は最近、原価率の上昇が顕著になっており、高収益体質に陰りが見え始めている。特にiPad miniの原価率が高く全体の利益を押し下げているといわれる。今期の売上原価は63%で、前年同期比で10%も増加した。
 スマホ・シフトのきっかけを作った同社だが、スマホの利用が当たり前となり価格低下の圧力が高まった今、以前のような驚異的な利益率に戻すことは困難だろう。

 スマホの恩恵を受けているのはもはや、スマホ向けのLSIを製造し、製品仕様の主導権を握っているクアルコムくらいである。同社はかつてのパソコンの世界でのインテルと同様、スマホの仕様をオープンにし、中国など新興国メーカーが低価格でスマホを製造できる環境を提供している。スマホ低価格化は同社が仕掛けているといってよい。

 アップルの革命的な製品からはじまったスマホ戦争は、最終的にほとんど勝者がいなくなってしまった状況にある。株価はすでにこうした状況をすべて織り込んでおり、目立った動きはない。IT銘柄はすでに安定的な投資対象に変貌しているといってよいだろう。

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