中国経済崩壊のリスク

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 中国経済の変調を示す経済統計が相次いでいる。製造業の景況感を示す購買担当者景気指数(PMI)は低迷が続いており、一方で消費者物価指数は下がらずインフレのリスクも指摘されている。
 一部の金融機関が資金ショートを起こしているという噂もあり、短期金利が一時7%台まで急上昇するという場面もあった。

 中国当局はこの状況に対して抜本的な対策を実施する気配はない。過剰な土地投機といったバブル的な経済活動は共産党幹部の腐敗と密接に結びついており、習近平政権は景気対策よりも腐敗一掃を優先する方針だからである。

 こうした強硬姿勢は当然、中国経済がハードランディングしてしまうリスクを高めることになる。内需を中心とした中国経済の回復に強い自信を持っているのか、それとも最悪の事態をすでに想定しているのか?市場では共産党指導部の真意を測りかねている状況だ。

中国の製造業はすでに2009年にピークアウトしていた
 そもそも中国経済は現在どのような状態にあるのだろうか?図1は中国の株価(上海総合指数)と製造業購買担当者景気指数(PMI)を示したチャートである。

 製造業購買担当者景気指数は、製造業の資材購入担当者などにアンケート調査を行い、その結果を指数化したものである。50を上回ると好景気、下回ると不景気と判断される。中国のPMIはリーマンショック後のリバウンドの際には55を超えていた時期もあったが、徐々に数値は低下してきており、最近では景況感の節目である50前後を行き来している。これまで中国経済が10%台の経済成長を続けてきたことを考えると、生産の落ち込みが激しいことが分かる。


 PMIの数値は中国の株価との連動性が高い。上海総合指数は基本的にPMIと同じ動きを見せている。中国経済はリーマンショックの影響を受けずこれまで順調に推移してきたイメージがあるが、このチャートを見る限りでは、少なくとも製造業については、2009年から2010年頃にすでにピークを迎えていたことがわかる。

インフラ建設主導の内需は2010年がピーク
 製造業の不振が続いていたにもかかわらず、中国の消費者物価指数は最近まで上昇傾向が著しく、一部からはインフレの懸念すら出ていた。食料品の高騰が国民の不満の原因になっており当局が対策に乗り出しているという報道もあった。また土地投機が激しく、不動産価格の上昇が止まらないという事態も発生している。

 図2は中国の消費者物価指数と都市部における固定資産投資額の伸びを示したチャートである。固定資産投資の伸びは中国におけるインフラ建設との連動性が高いと考えられる。
 これによると消費者物価指数は2010年から2011年にかけてピークとなり、その後、伸び率が低下している。製造業における生産のピークは2009年だったが、消費者物価指数のピークはそこから1~2年遅れている。

 また同じ時期(2010年から2011年にかけて)に、固定資産投資の伸び率が大きく変動している。伸び率に大きな変動が見られる時は、ほとんどの場合トレンドがピークを迎えている。この時期、中国のインフラ建設がピークとなり、これにともなって消費者物価指数も急上昇したことが推察される。その後、インフラ建設の抑制が始まったことから、物価の伸びもこれに合わせて鈍化していったと考えられる。


現在の中国は車の両輪がない状態
 これまでの中国経済は高度成長型であり、洗練された経済システムが十分に整っているとは言い難い状態であった。海外に対して安価な製品を供給する製造業を軸にした外需経済と、官主導のインフラ建設を背景とした内需経済は、相互に深く関連することなく別々に発展してきた可能性が高い。

 製造業については、リーマンショック以降、欧州の深刻な景気低迷を受け、2009年をピークに生産が減少していたと考えられる。だが中国政府によるインフラ建設が続いていたことから内需はあまり影響を受けず、2011年頃までは堅調に推移し物価も上昇していた可能性が高い。だがその後はインフラ建設も一巡して内需が低迷し、現在のような状況に陥っていると考えられる。

 世界経済の不振から外需主導で中国経済が回復するシナリオは描きにくい。また中国当局はインフラ建設を今後増加させる意向は持っておらず、インフラ建設主導の内需拡大も期待できない。中国経済がこの先、急回復する確率はかなり低いといってよいだろう。

すでに中国バブルは崩壊してしまった後?
 一方で、中国経済が一気に崩壊して恐慌状態になってしまうシナリオも描きにくい。チャートで示したように製造業の不振は2009年から、内需の不振は2011年からすでに始まっている。株価はピーク時から比較すると3分の1に、2009年からの比較でも40%の下落となっている。すでにかなりの大暴落となっており、ここからさらに信用収縮が起こるのかどうかは微妙なところだ。

 むしろ問題なのは、日本と同様、過剰な不動産投資が生み出した大量の不良債権が、今後長期にわたって中国経済を苦しめるというリスクである。中国の指導部もむしろこちらのリスクを懸念しているのかもしれない。そうだとすると、指導部が景気拡大よりも投機抑制や支出抑制を優先させているのもうなずける。

 もちろん油断は禁物である。米国では順調な景気回復が続いており、FRB(連邦準備制度理事会)は早ければ9月から量的緩和策の縮小を開始する可能性がある。そうなると中国を含む新興国から資金が逆流し、市場の混乱に火をつける可能性もある。今後しばらくは中国経済の動向には要注意である。

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