人口動態が映し出す長期的な経済成長の行方

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 人口動態が映し出す長期的な経済成長の行方
Share on Facebook

 国連経済社会局が6月13日に発表した世界人口展望によれば、現在約70億人の世界人口は、2050年に96億人、2100年には109億人に達するという。
 人口は今後の経済成長の推移を考える上で非常に重要な指標である。人口は経済成長を支える2大要素の一つであり、経済成長のかなりの部分が人口増加に依存しているからである。

 このことは、今後急激な人口の減少に直面する日本と中国にとって、極めて重要なテーマである。
 現在と同じ生産性水準のままでは、両国は成長を維持できなくなる可能性がある一方で、長期にわたって人口の増加が見込まれている米国は相対的に有利な状況にある。

GDPを決める2大要素は人口と資本
 どうすればより高い経済成長を実現できるのか、多くの経済専門家が様々な提言を行っている。経済の分析や予想にはとかく難解なキーワードがつきものだが、経済成長を実現する基本要素というのは実はそれほど多くない。

 経済成長のモデル化は一般的に生産関数という概念が用いられることが多いのだが、それによると、経済成長を決定する基本要素は3つしかない。ひとつは労働、もうひとつは資本、最後が技術革新である。しかも技術革新は、最初の2つの要素で説明ができない部分の解釈として後付けで用いられるものであり、実質的には労働と資本の2つで決定されることになっている。
 労働は人口を代理変数として用いることができるので、簡単に言ってしまえば経済成長は人口と資本の2つで決まることになる。しかも資本についても、GDPの一定割合が資本に回ると仮定することが多いので、GDP予測における人口の依存度は非常に高い。

GDPの人口への依存度は高い
 将来の経済成長は、過去の労働、資本の増加量とGDP成長をもとに数式モデルが作成され、これをベースに予測が行われる。つまり、経済成長予測は、過去に成立したメカニズムが、将来についてもある程度有効であることを前提としている。図1は1980年代の日本の経済データを用いて本誌が作成したGDPシミュレーションである。


 労働Lと資本Kが100の状態からそれぞれどの程度増加すると、最終的にGDPがどのくらい上昇するのかを示している。これを見ると、資本Kを2.5倍(100→250)にしてもGDPは1.3倍程度(100→130)にしか増えないことが分かる。一方、労働Lを2.5倍(100→250)にするとGDPは1.5倍(100→150)になる。つまり資本投下よりも人口増加の方が、GDP成長には有利に働くのである。

 これはあくまでモデルを使った机上の空論であり、実際に人口が減少する社会では、技術革新が促進されたり、資本の感応度が増加するなど、モデルにおけるパラメータ間の関係が動的に変化する可能性がある。だが人口動態が経済成長に極めて大きな影響を与えるという事実に変わりはない。

最初に日本、続いて中国が人口減少を迎える
 国連によれば、現在の世界の総人口は約70億人となっている。地域別の予測では、現在42億人の人口を擁するアジアが将来にわたっても最大人口を維持するとしている。だがアジアも経済の成熟化に伴って2050年の50億人強をピークに減少に転じることが予測されている。
 一方、現在10億人程度のアフリカは2100年には4倍の40億人に達する見込みとなっている。そうなると、2100年における世界の総人口の約90%がアジアとアフリカの2地域で占められるという事態になる(図2)。


 国別の人口では中国とインドが突出しており、中国は現在約14億人、インドは12億人である(もっと多いという説もある)。だが両国における今後の推移は大きく異なっている。
 中国は2030年の14.5億人をピークに急激に減少に転じる一方、インドは2060年頃まで人口の増加が続き16億人を突破する見込みだ。中国は絶対数は多いものの、ピークを過ぎてからの減少スピードは極めて速い。2100年には11億人程度まで減少する見込みとなっており、25%の人口が失われてしまう計算だ。

 先進国は総じて人口の減少もしくは横ばいが続き、現在1億3000万人ある日本の人口は2100年にはなんと8500万人を切ってしまう。唯一の例外は米国で、現在3.2億の人口は増加を続け、2100年には4.6億人に達する見込みだ(図3)。


米国は他国に比べて圧倒的に有利?
 中国はGDPの絶対値では日本を抜き世界2位の経済大国に躍り出た。だが一人当たりのGDPの数字は日本や米国の10分の1近くの水準であり、まだまだ貧しい。この状態で2030年をピークに人口が減少することを考えると、長期的に見れば中国はあまり有利な状況に置かれているとは言い難い。
 一方日本は、人口減少のスピードが極めて速く、客観的に見ればかなり不利な状況に置かれている。高い水準のイノベーションを維持していかないと、日本は貧しくなるばかりである。

 優位性がもっとも際立つのは米国である。中国の動向次第ではあるが、現在の状態を維持することができれば、世界トップの座を今後も半永久的に維持できる可能性がある。日本ほどではないものの、欧州も人口の減少が予想されており、ブラジルなどラテンアメリカも横ばいに近い予測となっている。

 波乱要因があるとすればインドかもしれない。1人当たりのGDPはまだ中国の4分の1ほどしかなく、中国よりも状況は混沌としている。だが大量の中間層が出現できる余地は残っており、人口増加と中間層の拡大がうまくマッチすれば、経済大国に成長できる可能性がある。

【関連記事】