バーナンキ議長の誤算

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 米FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は6月19日、とうとう量的緩和策の縮小に言及した。
 米経済がこのまま順調に推移すればという前提条件付きだが、来年9月には量的緩和を終了させるという見通しを明らかにした。逆算すると、早ければ今年9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で緩和縮小を宣言し、国債の買い入れペースを引き下げる可能性がある。

 バーナンキ氏の発言を受けてダウ平均株価は4営業日で650ドルほど下落し、長期金利は0.4%近く跳ね上がった。ダウの下落とドル高、金利上昇はあらかじめ想定済みだったが、中国など新興国の株価が軒並み暴落してしまったことから、市場関係者は動揺している。

 中国は10%台の驚異的な成長スピードから7%台の安定成長に舵を切り始めている。だがブレーキを踏み過ぎると、これまでの反動で一気に経済が崩壊するリスクを抱えている。場合によってはFRB(連邦準備制度理事会)の出口戦略が中国バブル崩壊のきっかけにもなりかねない状況になってきた。

米国経済は順調だが
 FRBが出口戦略に舵を切った背景には、順調な米国経済の現状がある。米国経済は、第2四半期に入り、歳出強制削減の影響や欧州と中国の景気後退によって踊り場に差し掛かっているものの、総じて順調に推移している。米国の第1四半期における実質GDP成長率は年率2.5%、通年でも2.0%程度の成長が予想されている。

 バーナンキ氏がもっとも懸念しているのは失業率である。現在の失業率は7.6%とまだ高めの水準だが、10%に達したリーマンショック直後に比べれば状況はだいぶ改善してきている。バーナンキ氏は記者会見において「景気の下振れリスクは低減していると」として、米国経済の現状に強い自信を示した。

 米国経済が底堅く推移しているとすれば、大きな弊害が出る前に緩和縮小に舵を切るのは合理的な選択といえる。
 量的緩和策の縮小が実施されれば、長期金利の上昇とドル高がもたらされることになる。一時的だが株価も下落すること予想される。量的緩和であふれたマネーに支えられた現在の株価は割高となっている可能性が高いからだ。実際、バーナンキ氏の会見後には、金利とドルは上昇し、ダウは下落した(図1)。
 だが金利上昇が景気回復を反映したものであれば、最終的には企業業績の伸びを期待して、株価も回復してくるはずである。債券から株への資金シフト、いわゆるグレート・ローテーションが発生するからである。


出口戦略は新興国を直撃
 だがFRBの出口戦略は、思わぬところに影響を与えている。中国をはじめとする新興国の株価が軒並み暴落しているのである。6月24日の上海総合指数は上海総合指数は2000ポイントを割り込み、1963.23ポイントで引けた。下げ幅は5.3%と、1日の下げ幅として約4年ぶりの大きさとなった。香港市場や韓国市場も軒並み下落している。
 日本はFRBの出口戦略が直接の原因ではないが、アベノミクスへの期待が縮小したことで、これまでの上げ幅の多くを失ってしまっている(図2)。

 FRBが出口戦略を実施すればドル高となり、世界中に拡散していたドルが米国内に戻ってくることから、新興国から資金が引き上げられることはある程度予想されていた。だが多くの投資家が同じことを考え、株式の売りが続出している。
 特に中国は、現在景気後退の瀬戸際であるにもかかわらず、国内の政治的事情から金融引き締めを行わなければならない状況にある。下手をすると、金融引き締めとFRBの出口戦略が重なり、想像以上の資産価格の下落を招く危険性も出てきている。

 バーナンキ氏がこのあたりの影響も想定していたのかついて市場の見方は分かれている。だが新興国の株価下落がFRBの誤算であったとしても、よほどのことがない限りは、米国の出口戦略が大きく後退することはないだろう。


中国株の暴落は最大の危機か投資チャンスか?
 もっとも注目されるのが中国当局の対応である。中国はこれまでインフラ建設主導で驚異的な経済成長を実現してきた。インフラの整備が一段落したことや、最近では急激な成長による弊害が目立つようになってきたこともあり、習近平政権では7%台の安定成長を目指す路線に転換を図っている。

 だが一方で、これまでのバブル的な経済運営の影響で、行き場を失ったマネーが不動産に集中し、価格の高騰が継続しているという事情がある。こうした投機マネーは表に出ない非正規の金融システムで調達されているケースも多く、腐敗の温床になっている(シャドーバンキングと呼ばれる)。

 経済政策を統括する李克強首相は、中国のシャドーバンキングに対しては厳しい姿勢で望む方針といわれ、当局は短期金利を意図的に急騰させている。一時は短期金利が13%にも達し、このままの状態が続けば資金調達に行き詰まり、経営破綻する企業が出てくる可能性も取りざたされる状況だ。

 また中国の主要な輸出先の一つである欧州の不振が続いていることから、製造業の伸び悩みも目立つ。香港上海銀行(HSBC)が6月20日に発表した6月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.3となった。50を割った前月からさらに低下しており、9カ月ぶりの低水準である。

 中国経済が大型の調整に突入してしまうのかは誰にも分からない。だが少なくともその確率が以前より高まっていることは間違いない。
 もし中国市場に大きな下落があれば、これから中国に投資しようとする投資家にとっては、非常に魅力的な投資チャンスとなるかもしれない。もちろんこれは中国最大の危機との隣り合わせでもあるのだが。

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