景気は良いのか悪いのか?

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 5月後半の株価下落から1カ月が経過しようとしている。テクニカル的にはそろそろ反発してもよいタイミングであり、株価は一旦下げ止まるとの見方が大半だ。だがもう少し長い目で見た場合、今後の株価推移については見通しが分かれる状況となっている。

 強気派は今回の株価下落は、期待先行で上げすぎた株価の調整であり、円安の効果が定着してくる年後半にかけて底堅く推移すると考えている。
 一方、アベノミクスに対して懐疑的な立場の投資家や、欧州、中国の景気減速を懸念する投資家は今年後半の株価上昇は期待できないと考えている。米国の金利が上昇し、FRB(連邦準備制度理事会)が出口戦略を控えていることもこの見方を後押ししている。

 短期的な株価の動きと経済成長に高い相関は見られないが、長期的には株価と名目成長率の相関は高い。このような不透明な状況においては、目先の株価よりも、足元の景気動向がどうなっているのか整理することの方が重要だろう。

個人消費が主導した1~3月期の経済成長
 内閣府が5月16日に発表した1~3月期の実質GDP成長率は前期比0.9%、年率換算では3.5%となった。6月10日に発表された2次速報値は上方修正され、実質GDP成長率は前期比1.0%、年率換算では4.1%となった。1.0%の成長のうち内需による寄与度は0.6%、外需による寄与度は0.4%であった。また内需のほとんどが個人消費によるものである。

 昨年末からの株高で富裕層に中心に個人消費が活発になり、年明け以降は中間層にも消費が拡大してきていることは各種データから確認されていた。1月~3月期については、旺盛な個人消費が牽引役となり高い成長率を実現していたことが分かる。株価の上昇が消費を刺激し、それがまた株価を押し上げるという好循環が成立していたのである。
 一方、日本経済の要である製造業の設備投資は冴えない状態が続いていた。多くの経済データが設備投資は横ばいの状態であることを示唆している。
 昨年末からの株高を支えていたのは、アベノミクスに対する期待とそれに敏感に反応した個人消費であったことは間違いない。今回の株価下落の理由をあえて探すなら、盛り上がりすぎた期待の調整、あるいは横ばいが続く設備投資への警戒といったところになるだろう。

消費は依然として堅調だが、先行指標は減少に転じている
 では直近の景気動向はどのような状況になっているのだろうか?これまで好調に推移してきた個人消費だが、その勢いはまだ続いている。内閣府の消費動向調査によれば、5月の消費者心理は5カ月連続のプラスとなった。
 消費動向調査は、内閣府が毎月公表しているもので、消費者へのアンケート調査をもとに「暮らし向き」「耐久消費財の買い時判断」などについて指数化(消費者態度指数)したものである。5月の消費者態度指数は47.5で5カ月連続でプラスとなった。良好とされる50は下回っているものの、個人消費は引き続き堅調といえる(図1)。


 一方、景気に対する先行指標といわれる景気ウォッチャー調査は、少し気になる結果となっている。景気ウォッチャー調査は、タクシー運転手、娯楽施設の従業員など、景気動向を肌で感じる職業の人に景況感をヒアリングして指数化したもので、景気の動向をもっとも敏感に反映するといわれる。
 アベノミクスが始まって以来、すべての指標に先行して景気ウォッチャーの指標が上昇してきたが、5月の数値は55.7となり、こちらは3カ月連続で前月を下回った。

 景気ウォッチャー調査の結果については、過大な期待が正常な状態に調整するための期間とみるのか、実際に景気が腰折れしていると見るのかによって、今後の捉え方は大きく異なってくる。ともかく、景気回復に対する期待が膨らみ、それに刺激された個人消費が主導するというフェーズは終了したと考えるべきだろう。

企業の状況は着々と改善しているが・・・
 企業の側は現在の経済状況をどう感じているのだろうか?法人企業景気予測調査の結果は想像以上に良好である。現在の景況感を訪ねる項目では、調査を開始した2004年以来最大の数値となった(大企業、全産業の項目)。

 法人企業景気予測調査は、内閣府と財務省が四半期ごとに実施する調査で、企業経営者に景況感や売上高、需要などについて見通しを尋ね、指数を作成している。前回の調査では大企業の景況感は上向いていることが確認されていたが、中小企業(特に製造業)の景況感は最悪の状況となっていた。

 この状況は企業業績にも表れている。財務省の法人企業統計によれば、1~3月期における全産業(金融機関を除く)の売上高は326兆8,637億円と前年同期比5.8%のマイナスに、一方経常利益は6.0%のプラスの減収増益となった。増益ではあるのだが、全体の規模を縮小し、コスト削減で利益を上げる状況が続いていることがわかる。また設備投資も前年同期比3.9%減となっており、マイナスは2四半期連続である。

 だが、今回(4月から6月)の調査では、すべての企業規模と業種で大幅なプラスとなり、景況感が確実に上向いていることが確認された(図2)。特に中小企業の景況感が改善していることは注目に値する。日本は大企業とその下請けの中小企業で構成される重層的な産業構造となっている。中小企業の景況感が改善しているということは、大企業からの発注が増えてきたことを示しているからだ。


設備投資の改善がはっきりするまでは慎重なスタンスが必要?
 企業の景況感の改善が設備投資意欲につながっていれば、持続的な景気回復局面に入ったことがより確実になってくる。だが残念なことに設備投資意欲の大きな改善はまだ見られない。

 設備投資の状況を反映するといわれる機械受注の結果は、あまり好ましいものではなかった。4月における「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比8.8%のマイナスだったからである。
 実は4月の機械受注は多くの市場関係者が注目していた。3月の数値が前月比14.2%という大幅増となっており、これまでの停滞トレンドから大きく抜け出すシグナルと見られていたからである。だが今回はその上昇分の多くを打ち消してしまい、全体のトレンドを変更させるまでには至らなかった。機械受注の6カ月移動平均線は若干下向きになってしまっている(図3)。


 機械受注は日経平均株価との相関性が比較的高いことで知られている。日経平均の6カ月移動平均線はちょうど現在の株価水準と一致しており、株価が今後のトレンドを決定する重要な局面に差し掛かっていることを示している。
 今年1月に成立した2012年度補正予算(総事業費20兆円、政府支出10兆円の緊急経済対策)の影響がまだ継続することを考えると、大きな景気の腰折れはないだろう。だがはっきりとした設備投資の改善が見られるまでは、株価にはあまり期待しない方がよいだろう。少なくとも、今回の下落から一本調子の回復となる可能性は少ないと考えられる。

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