株価と為替が重大局面。購買力平価を乗り越えられるか?

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 アベノミクスを好感し、これまで順調に推移してきた円安と株高がヤマ場を迎えている。
 5月23日、日経平均株価は一時1万6000円目前まで迫ったものの、その後突如急落。6月に入ると一時は1万2000円台まで下落した。為替も株価と同じ動きを見せており、103円台まで進んだドルは一気に97円台まで下落している。

 短期的に大きな下落幅となったのは、これまで買われすぎていた反動というテクニカル的な意味合いが強いものの、もう少し長期的なスパンで見た場合、日経平均の先行きについては解釈が大きく分かれている。

 ネガティブに見る投資家は、6月5日に発表された成長戦略の第3弾は目新しさに欠ける内容であったことから、アベノミクスの将来性を疑問視し始めている。日銀の量的緩和策が思ったほど物価に対して効果を上げていないという事実もこの見方を後押ししている。
 物価がなかなか上昇してこないことから、現実の為替レートとの相関性が高いといわれる購買力平価による理論為替レートが思いのほか円安に振れてこないのである。このままでは円安にブレーキがかかってしまい、株価上昇のチャンスを逸してしまうかもしれない。

米国の出口戦略の後退でドル安圧力が上昇
 ここ半年の株高を支えてきた要因のひとつが円安であることは間違いない。露骨な為替誘導政策は国際問題となるため、関係者は決して口にしないが、アベノミクスと日銀による量的緩和策の本質が円安にあることは間違いない。

 日経平均は昨年末以降、順調に上昇してきたが、為替もまったく同じような動きを見せている。今後も日経平均が継続的に上昇していくためには、円安トレンドが持続する必要がある(図1)。


 だが市場関係者の多くが、長期的にはともかく短期的には、円安が一段落したとの見方を強めている。理由は2つある。ひとつは米FRB(連邦準備制度理事会)の出口戦略が少し後退していることである。

 米国政府による強制歳出削減の影響で米国の第2四半期GDPは伸びが鈍化しており、出口戦略を急ぐことについては慎重な意見が強くなってきている。早ければ9月ともいわれていた量的緩和の縮小は年末あるいは年明けになるとの見方が大半だ。出口戦略が後退すればドル高要因が消えることになるため、円にとっては買い圧力が強まることになる。

購買力平価という厚いカベ
 もうひとつの理由が購買力平価を用いた理論的な為替レートである。購買力平価による為替レートは、二国間の物価の違いによって計算される理論的な為替レートである。一物一価の原則をもとに、物価が上昇した国の通貨は下落し、物価が下落した上昇した国の通貨が上昇すると考えることで、理論的な価格を算出することができる。

 1973年の変動相場制の導入以降、ドル/円の為替レートと購買力平価による理論的な為替レートとの間には極めて高い相関性が観察される。現実の為替レートが購買力平価の理論的なレートを超えたことはほとんどない。80年代、米国が意図的に強いドル政策を実施していた時期以外は、すべての局面において、理論レートに現実のレートが追いつくと、円高に逆戻りしている(図2)。


 これまで円高が行き過ぎていることの根拠として、購買力平価による理論レートと現実レートの乖離がよく取り上げられていたが、それが縮小してしまった現在、逆に円安への圧力は減少することになる。
 実際、為替相場は、購買力平価(企業物価指数ベース)による理論的なレートである99円から100円を境に、円安の流れが停滞してしまっている。しばらくはこの水準をにらんだ展開が続く可能性が高い。

これ以上の円安を実現するためには現実の物価上昇が必要
 もっとも、長期的に見れば、円高ドル安のトレンドが終了し、逆に長期的な円安ドル高トレンドになるという見方は多くの市場関係者の中で共有されている。しかも日経平均は上昇を開始してからあまり時間が経っておらず、相場が完全に終了したのか見極める段階にはない。

 過去15年の日経平均の動きを見ると、2003年からの大型上昇相場は4年間近く継続している。今後日経平均が下落に転じるにせよ、上昇を続けるにせよ、大きなトレンドを見極めるためにはもう少し時間が必要となる(図3)。


 先にも述べたように株価上昇をリードするのは今後も為替である可能性が高い。そして為替が購買力平価との相関性が高いのだとすると、これ以上の円安を望むためには、現実の物価上昇が必要となってくる。

 残念ながらまだデフレ解消にはほど遠い状態だが、円安の影響による輸入物価の上昇もジワジワと進んできている。状況によっては輸入物価主導のインフレが進み、名目上の株価だけが上昇するというよくないシナリオに発展する可能性もある。政局的にはともかく、政策的な意味合いにおいては、安倍政権は重大な局面を迎えつつあるといえるだろう。

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