米中欧で明暗が分かれた、2013年の世界経済見通し

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 2013年における各国の経済成長見通しが出揃ってきた。経済協力開発機構(OECD)は5月29日、2013年の世界経済見通しを発表した。すでに4月にはIMF(国際通貨基金)が世界経済の成長見通しを発表しているほか、EU(欧州連合)も欧州圏の2013年成長見通しを明らかにしている。

 全世界の実質GDP成長率見通しは、OECDが3.1%、IMFが3.3%であった。OECDの前回(2012年11月)見通しは3.4%、IMFの前回見通し(2012年10月)は3.6%だったので、いずれも下方修正ということになる。欧州の景気失速が著しいことや、中国の成長にブレーキがかかったことが大きく影響した。

 米国もわずかに下方修正となっているが、比較的高い成長を維持しそうだ。日本は大型の景気対策で当面は高い成長率となる見込み。好調な米経済と、相対的に見ればまだ高い成長率を維持している中国が世界経済をリードしており、欧州が全体の足を引っ張っている。ただし中国経済の米国依存は高まっている。

結局は米国頼みの状況に
 米国の成長率見通しは、OECD、IMFともに1.9%となっている。2013年1~3月期の米国の成長率は2.4%であった。第2四半期以降、政府の歳出削減が景気を減速させる可能性があるが、1.9%の成長を達成することは可能と思われる。
 
 米国の景気をリードしているのは旺盛な個人消費である。一方、世界経済の影響を大きく受ける製造業は冴えない展開が続いている。米国はGDPの7割が個人消費で占められており、個人消費に支えられた内需が製造業を中心とした外需のマイナスをカバーしている状況だ。

 リーマンショック後、米国の最大の弱点となっていた住宅価格がこのところ急上昇している。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が5月28日に発表した3月のケース・シラー住宅価格指数は、前年同月比で10.9%と、2月の9.4%に続いて大幅な伸びとなった(本誌記事「米国の住宅市場が急回復」参照)。
 アリゾナ州フェニックス、ネバダ州ラスベガス、ジョージア州アトランタ、ミシガン州デトロイトなど、サブプライム危機よる住宅価格下落が激しかった地域での価格上昇が鮮明となっており、不良債権処理が順調に進んでいることを示唆している。

 住宅価格の上昇は米国の個人消費を確実に押し上げることから、今後も堅調な推移が期待できる。世界経済は結局、米国頼みの状況になってしまっている。


中国の高度成長は終了。今後しばらくは米国向け輸出に依存
 中国の成長率は、OECDでは8.5%から7.5%に、IMFでは8.2%から7.8%に大きく下方修正された。中国はこれまでインフラ建設主導で10%台という高い成長率を維持してきた。だが無理な成長に伴う弊害が大きくなってきており、習近平国家主席への政権交代をきっかけに、安定成長路線に舵を切り始めている(本誌記事「IMFがアジアの経済成長見通しを発表。中国依存の状況は変わらず」参照)。

 中国の4月における鉱工業生産は前年比9.3%の増加となったが、過去1年間の平均値よりも0.2ポイント低い数字となっている。分野別では、化学(12.3%増)、鉱物(11.3%増)などが好調だが、輸送機器や電力などインフラ系の低迷が続いている。輸出も伸びが鈍化した状態だ。

 もっとも中国経済の伸びが低調というのも、従来の10%成長と比較しての話であり、絶対値としては世界経済の牽引役である事実は変わらない。ただインフラ建設という官製の需要は止まっていることを考えると、当面は米国向けの輸出が中国経済の動向を大きく左右することになる。中国経済の動向は結局のところ、米国経済に大きく依存している。

低迷が続く欧州。緊縮路線は転換か?
 世界経済における最大の懸案事項は欧州の失速である。スペインやギリシャなど債務国の財政危機は一段落したものの、今度は構造的な不況という問題に直面している(本誌記事「欧州景気の失速が鮮明に。アベノミクスにとっては微妙な状況」参照)。

 欧州債務危機の影響で大幅なマイナス成長となっている南欧諸国に引き続いて、何とかプラス成長を維持してきたフランスもマイナス成長に転じる可能性が高くなってきた。これらマイナス成長国に足を引っ張られる形で、これまで良好な成長を維持してきたドイツ経済にも陰りが見え始めている。

 欧州では、労働市場が硬直化しており、南欧諸国を中心に高い失業率が構造的問題となりつつある。高い失業率は政治的な問題を引き起こしており、結果としてドイツが主導してきた緊縮財政路線に対する批判が高まっている。

 これを受けて欧州連合は5月28日、フランスやスペインなどEU加盟6カ国の財政赤字削減目標を緩和すると発表した。
 このことは、EUの基本政策であった緊縮路線からの転換を意味している。財政再建は後回しにして景気対策を行い、成長を維持したい考えだ。

 財政出動を行えばある程度の効果は期待できるかもしれないが、過剰な債務という根本的な問題の解決は先送りされることになる。

日本は財政出動の効果で一時的に高成長
 一方、日本の経済成長見通しは大幅に引き上げられた。OECDにおける前回の見通しでは0.7%だったが今回は1.6%に上方修正された。IMFも1.0%から1.6%に見通しを引き上げている。日銀による異次元の量的緩和策と、今年1月に成立した2012年度補正予算(10兆円の緊急経済対策)の影響が考慮されている。

 ただ2014年以降については、消費税の増税や財政出動の終了で、成長率の低下が予想されている。現在のところ各国は日本の継続的な成長にはまだ懐疑的だ。日本が本格的な成長を実現できるのかは、6月に提示される成長戦略の内容に大きく左右されることになる。

ここ1年の世界経済は米国の動向次第
 全体を俯瞰してみると、現在のところ、世界経済の中心的な役割は米国が担っている。米国の旺盛な個人消費が中国の輸出を増やし、それにともなって日本の中国向け輸出も増加するという構造になっている(中国向け輸出の多くは、最終製品として米国に輸出される)。
 米国を最終消費地とする経済サイクルが回っているうちは、欧州の不振をカバーすることができるかもしれない。だが米国経済の成長が鈍化するような事態となると、中国は単独では世界経済を支えることができず、世界同時不況になる可能性もある。

 当面は米国経済の動向、特に長期金利とFRB(連邦準備制度理事会)の出口戦略に注目する必要があるだろう。

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