欧州景気の失速が鮮明に。アベノミクスにとっては微妙な状況

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 欧州の景気後退が深刻な状況となっている。最新のユーロ圏経済成長見通しは下方修正となり、フランスはマイナス成長に転じる可能性が高くなってきた。これまで好調だった北部でもドイツの成長率にも陰りが見え始めているほか、オランダもマイナス成長のままだ。

 事態を深刻にさせているのは、高止まりする失業率に改善の兆しが見られないことである。
 EU全体の失業率は12.1%と過去最悪を更新。スペインの失業率は26.7%、若年層に至っては55.9%と壊滅的状況だ。フランスも失業率が悪化してきており、この傾向はしばらく続く可能性が高い。

 欧州中央銀行(ECB)は、この事態を受けて政策金利を過去最低の0.5%にすることを決定している。ドラギ総裁は追加緩和も示唆しており、とうとうマイナス金利が視野に入り始めた。金融危機への懸念からいったんは上昇した欧州の金利だが、皮肉にも今度は、景気低迷を反映して急激な低下が進んでいる。

とうとうフランスもマイナス成長に
 欧州委員会が5月3日に発表した2013年の欧州経済見通しでは、ユーロ圏の実質GDPは前回予想から下方修正されマイナス0.4%となった。EU全体でもマイナス0.1%となっており、欧州全域で景気が失速している。

 深刻な財政問題を抱えるスペインやイタリアがマイナス成長であることは予想の範囲内であったが、何とかプラス成長を維持できると思われていたフランスがとうとうマイナス成長に転じることになった(フランス政府はプラス成長としている)。
 これまで経済が停滞する欧州南部と成長を維持する欧州北部という図式が成立していたが、それも崩れつつある。ドイツの成長率は0.4%とかろうじてプラス成長となったが、前回からは0.1ポイントの下方修正となった。オランダもマイナス成長から脱することができない状況にある。


失業率の悪化は政治的な問題を引き起こす
 成長率の低迷はともかく、欧州各国の市民生活を直撃しているのが高い失業率である。最新(3月)の統計では、スペインが26.7%、フランスは11.0%となり、いずれも過去最悪の数値を更新している。イタリアも11.5%と横ばいが続いており、失業率の低下に歯止めがかからない状況だ。5%台を維持しているのはドイツやルクセンブルグなどごくわずかだ。

 特にひどいのが若年層の失業率である。スペインは55.9%、フランスは26.5%、イタリアは38.4%となっており、若者にはほとんど職がない状況となっている。

 フランスやスペインでは、高い失業率に抗議するデモが頻発しており、政権の悩みの種となっている。国民の多くはEUが各国に緊縮財政を強要していることが失業率増加の原因と考えており、EUの緊縮財政路線を主導するドイツへの反発が根強い。

 イタリアでは、緊縮財政に国民の不満が爆発し、財政再建を主導してきたモンティ首相が辞任する事態となった。

 首相辞任を受けた総選挙は大混乱となり、結局、左右両派を統合した連立政権の樹立となった。連立政権を構成する主要政党は、何らかの形で緊縮財政の見直しを訴えており、首相に選出されたレッタ氏(写真左)は、就任早々、欧州各国を回り、緊縮財政からの路線転換を表明している。

欧州の失速によってアベノミクスの効果は半減?
 EUは今のところ、財政再建や構造改革が重要との立場を崩していないが、欧州各国にはそれを受け入れる余裕がなくなってきている。すでにEUはフランスに対して、財政再建の目標期間を2年延長する方針を明らかにしている。

 2014年のユーロ圏成長見通しについては、前回予想から0.2ポイント引き下げたものの1.2%とした。EU全体では1.4%成長が可能としている。ただこの数値は下振れするリスクもあり、来年以降景気が持ち直すかは微妙な状況だ。
 今年後半にかけて、さらに景気が失速する事態になれば、金融危機後の基本路線であった緊縮財政が事実上棚上げされる可能性も出てきたといえる。

 ECBが再び緩和策を拡大し、各国が財政出動を強化する事態になれば、ユーロ安が再び進行する可能性がある。最終的には米国の景気次第だが、ユーロが弱含みに推移すれば、アベノミクスの効果は半減してしまうかもしれない。また欧州の景気は中国の輸出との関連性が強く、中国の成長にも影響を与えることになる。欧州の景気失速がアベノミクスの足を引っ張るというリスクについて、多少は意識しておいた方がよい時期に入っているのかもしれない。

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