米国の住宅市場が急回復

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 米国で住宅市場の回復がより鮮明になってきている。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が4月30日に発表した2月のケース・シラー住宅価格指数は、前月比で1.2%の上昇となり、前年同月比では9.4%の大幅上昇であることが明らかとなった。

 対前月比で指数が上昇するのは13か月連続。対前年比での上昇も9か月連続となった。上昇幅は毎月拡大していることから、住宅市場が着実に回復していることを伺わせる。

 米国経済と住宅価格には密接な関係がある。日本と異なり、米国の住宅用不動産は流動性の高い資産であり、住宅価格の上昇は個人消費に直結する。

 米国経済は旺盛な個人消費を背景におおむね順調に推移してきたが、低迷が続く欧州の経済情勢や失業率の動向などから今年の第2四半期は踊り場に差し掛かるとの観測も出ていた。
 米国経済は、旺盛な個人消費と冴えない工業生産との間で綱引きが続いているが、住宅市場の好調が今後も続けば、景気の踊り場を回避することができるかもしれない。そして米国の景気回復の恩恵をもっとも享受することができるのは、ほかならぬ日本である。

不良債権処理が順調に進む
 住宅指数の都市別の動向では、アリゾナ州フェニックス(対前年比23%)、ネバダ州ラスベガス(同17.6%)、ジョージア州アトランタ(同16.6%)、ミシガン州デトロイト(同15.2%)などの上昇が顕著となっている。これらの都市圏は、サブプライム危機よる住宅価格下落がもっとも激しかったエリアであり、金融機関は大量の不良債権を抱えていた。これらの価格が急上昇しているということは、破産処理がおおかた終了し、市場が健全化してきたことのサインといえる。

 実際、JPモルガン・チェースやウェルズ・ファーゴといった大手銀行は不良債権処理を順調に進めており、両行の2013年第1四半期決算は、過去最高の純利益となっている。また米政府の管理下で経営再建中だった米国の住宅公社2社(ファニーメイとフレディマック)も2012年12月期の決算で黒字を達成した。2社とも通期の黒字は6年ぶりで、不良債権処理が順調に進んでいることを伺わせる。

長期データも上昇トレンド入りを示唆
 住宅市場の回復は過去のデータからも裏付けられる。2月のケースシラー住宅価格指数のうち、全米20都市を対象にした指数は149.8であった。この数値は2003年12月の水準であり、米国はその後本格的な住宅バブルに突入している。住宅バブル開始直前の水準まで価格が戻ったということは、長期的な価格がほぼ正常化されたことを意味している。

 このことは、長期のデータを見ればさらにはっきりする。ケースシラー指数のうち、全米10都市を対象にしたものは1980年代からのデータが存在している。最新の数値は162.4だが、同指数の5年移動平均線は、現在の指数の値とほぼ同じ水準になる。つまり住宅価格を長期トレンドで見れば、バブル崩壊の下落局面は終了し、あらたな上昇局面に入ったことを示唆しているといえる(図1)。


米国の不動産価格の上昇はアベノミクスにとって朗報
 米国の家計部門は約20兆ドル(約1960兆円)不動産を所有している。米国の不動産は流動性が極めて高く、住宅を担保にしたローン商品も豊富に存在する。不動産価格が上昇し、所有者に含み益が発生すると、それは容易に個人消費の増加に結びついてくる。不動産価格は1年で10%近く上昇していることを考えると、今後、かなりの個人消費増加が見込めるだろう。

 日本ではアベノミクスの効果で、富裕層など一部の個人消費に改善傾向が見られる。だが日本経済は米国のように知識産業型への転換が進んでいない。本格的に経済が復活するためには、どうしても製造業の業績改善が必要となる。

 円安が進展しているにも関わらず、現実の輸出額は横ばいの状態が続いている。それは円安による輸出金額増加を輸出数量の減少で相殺してしまっているからだ。日本の輸出数量の低下は実は日本製品の競争力低下を示唆している可能性がある。日本が輸出を増大させるためには、自動車などまだ競争力が残っている分野において米国が消費を拡大させることが不可欠となる。米国の住宅価格の大幅な上昇は、アベノミクスにとって朗報といってよいだろう。

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