政府の成長戦略策定で、竹中氏の構造改革路線が急浮上

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 産業競争力会議のメンバーである竹中平蔵慶応大学教授が提出したペーパーに、霞が関の官僚が戦々恐々となっている。

 竹中氏は言わずと知れた小泉内閣における構造改革路線の中心人物。竹中氏のペーパーは、公共インフラの民間開放、規制緩和、外資誘致、さらにはこれらを先行的に進める「特区」の創設など、小泉時代を彷彿とさせる施策のオンパレードとなっている。

 安倍首相は4月17日の産業競争力会議に出席し、首相をトップとする国家戦略特区諮問会議を設置し、政府が責任を持って「特区」創設を進めていく考えを明らかにした。

 これまでの産業競争力会議は官僚主導で会議が進められ、特定産業を支援する官僚統制型のプランが議論されていた。今回「特区」に関するプランについて首相自らが言及したことで、成長戦略に関する議論は、官僚主導型の従来路線と自由競争型の構造改革路線が真正面からぶつかる状況となった。

竹中ペーパーの具体的中身とは?
 産業競争力会議はこれまで経済産業省の官僚が主導権を握っていた。同省からは12人の職員が出向しており、特定産業分野の育成や製造業支援、輸出振興などが議論されていた。会議のメンバーのうち約半数は事務局サイドの意向に沿ったプランを提言しており、当初は予定調和的に会議が進んでいた(本誌記事「成長戦略に関する議論を霞が関用語で解釈すると?」参照)。

 だが、竹中氏や楽天の三木谷会長など、一部の「構造改革派」議員らがこの動きに反発。3月後半から独自の提言を行うべく、水面下での根回しが始まっていた。今回提出されたペーパーはその過程を経て作成されたものである。

 竹中氏のペーパーには多くの具体的提言が盛り込まれているが、柱となっているのは、公共インフラの民営化、規制緩和、優遇税制の3つである。さらにこれらを先行的に実施するための場として「特区」の創設を強く主張している(図1)。

竹中氏が「特区」創設にこだわる理由
 竹中ペーパーの中核であり、霞が関の官僚がもっとも警戒しているのが「アベノミクス戦略特区」の創設である。竹中氏は小泉政権時代、真正面から構造改革に取り組み、各方面からの猛反発を浴びた。結果的に小泉政権は構造改革を最後まで実施せず、竹中氏はハシゴをはずされた格好になってしまった。

 竹中氏が特区の創設にこだわるのは、規制緩和や官業の開放に真正面から取り組めば、法律の改正が必要となり、前回と同じ結果になってしまうと考えているから。まずは特区という形で限定的な形で構造改革を進め、そこでの成果をもとに、本格的な法整備を進め全国に展開させる腹づもりだ。

 その拠点となるのが「アベノミクス戦略特区」というわけである。具体的には世界から最先端のビジネスを呼び込む「国際先端スーパー特区」、農業を強化するための「農業拠点特区」、最先端の医療サービスを提供する「医療ツーリズム特区」などが想定されている。

安倍首相は転向したのか?
 これらの施策は竹中氏が小泉政権において実現しようとした内容そのものであり、市場メカニズムを使ってサプライサイドから経済を刺激するという考え方に基づいている。

 アベノミクスに対する首相自身の真意がどこにあるのかは実はよく分かっていない。
 安倍首相は本来、竹中氏と同じ新自由主義的路線の推進者といわれていた。だが今回の政権では、国債増発による大型の補正予算を組んだり、従来産業を支援する経済産業省の路線を推進するなど、官僚主導型の統制経済路線に転向したかに見えた。

 一方で、各方面からの猛反発にも関わらず、竹中氏を産業競争力会議のメンバーに据え、特区の設置を決めるなど、新自由主義路線を推進する姿勢も見せている。量的緩和策の拡大もどちらかといえば、新自由主義的路線との親和性が高い金融政策といえる。

構造改革路線の再来なら外国人投資家が動く可能性も
 アベノミクスの3本目の矢は成長戦略だが、これがケインズ的なものになるのか、サプライサイド的なものになるのかで、今後の成長シナリオはまったく違ったものになる。

 もし特区のプランが順調に進み、サプライサイド的な政策スタンスが明確になってくれば、2003年から2007年にかけて見られたような大型の上昇相場か、あるいは1980年代のバブル経済の時に見られたような超大型の上昇相場が期待できるかもしれない。構造改革が進めば、外個人投資家が積極的に日本に投資する可能性が高いからである。

 一方、国内には構造改革路線に対する根強い反発がある。安倍政権が構造改革路線に舵を切った場合には、政治的に難しいかじ取りを迫られる可能性もある。

 6月にまとめる予定の成長戦略は、夏の参院選とも絡み、安倍政権の将来を左右する重要な試金石となりそうである。

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