金の長期的上昇相場は終わったのか?

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 12年間にわたる長期の上昇相場を演じてきた金価格に変調の兆しが見え始めている。
 4月15日のニューヨーク金先物市場は大幅安となり1トロイオンス=1360.60ドルで取引を終えた。前週末の終値から140.40ドルも下がっており、33年ぶり史上2番目の下落幅であった。1700ドル台をつけた昨年9月からはすでに20%近くも下落していることになる。

 複数のヘッジファンドが株式への乗り換えのために大量の売り注文を出したことや、中国のGDP値が予想を下回ったことなどが下落の主な要因といわれているが、はっきりとした理由は不明だ。
 短期的にはある程度の回復も予想されるが、市場関係者の中からは、金の長期的な上昇トレンドがとうとう終了したとの声も聞こえてきている。

長期的には上昇トレンドを描いているように見えるが
 米ゴールドマン・サックスは相場下落の2日前、2014年にかけての金相場の見通しを大幅に引き下げていた。同社では今後3カ月の見通しを1530ドルとし、従来の1615ドルから85ドル下方修正した。半年間の見通しは1600ドルから1490ドルに、1年間の見通しについては1550ドルから1390ドルにそれぞれ引き下げている。引き下げの主な理由として同社は、米国の景気が順調に回復していることをあげている。

 国内では金価格が下落したことで、金を購入しようとする人が増え、貴金属店は活況を呈しているという。また金需用の旺盛なインドや中国でも購入者が増加しているという報道もある。
 確かに金価格の長期的なチャートを見ると、金の上昇トレンドは続いており、今回の下落は一時的な押し目であるようにも見える。また金価格と同様に原油価格も長期的な上昇傾向が見てとれる(図1)。


 金や原油といったコモディティへの需要は、ドルに対する信用不安が背景にある。リーマンショック以降、米FRB(連邦準備制度理事会)を中心に世界の中央銀行は紙幣の増刷を繰り返しており、貨幣価値の減少が懸念されている。金に強気の投資家は、稀少性が高い金への需要は今度も増大すると考えている。

歴史的に見ればドルと金は逆相関
 だが市場関係者の中には、ゴールドマンの見解と同様、長期的な金の上昇トレンドが反転した可能性を指摘する人も多い。米国経済が順調に回復していることから、今後はドルが長期的な上昇トレンドとなり、それにともなって金価格は下落するとみているのだ。

 歴史的に見れば金価格とドル価格には逆相関があるといわれている。つまり、ドルが安くなると金が上昇し、ドルが高くなると金は安くなるという関係が成立する。 
 2000年以降、ドルに対する信用不安から金価格は大きく上昇した。ここにリーマンショックが加わったことで、基軸通貨ドルに対する危機感が高まり、さらに金価格は上昇を続けてきた。

 だが同じようなことは以前にもあった。1970年台のドル危機と金価格の高騰である。米国企業の競争力低下とベトナム戦争による財政負担の増加で、当時の米国経済は疲弊していた。ドルに対する不安が増大し金の流出が止められない状況となったことから、当時のニクソン大統領は1971年8月、金とドルの兌換を突然停止した(ニクソン・ショック)。
 その後レーガン大統領の登場で米国経済が劇的な復活を遂げるまでの約10年間、市場ではドル不安と金価格の高騰が続いた。しかもこの時期、偶然なのか必然なのか、オイルショックによる原油価格の高騰まで起こっており現在と状況が非常に酷似している。

現在価値に置き換えると金は高値を更新していない
 図2は現在のドル価値に置き換えた金価格と原油価格の推移を示したチャートである。1970年代のドル危機の際にはドルは現在価値で2000ドルまで上昇している。その後ドルが安定するにしたがって金の価格は下落し、2000年前後には300ドルを割る水準まで落ち込んだ。


 今回の金上昇は70年代以来のドル危機の再来といってよいかもしれないが、現在価値に置き換えた金価格は1980年につけた高値を更新していない。また原油価格も同様で、2008年につけた突発的な高値を除くと、相場全体としては1980年の高値を大きく超えた形にはなっていないのだ。

 つまり今回のリーマンショックによるドルの減価は、相対的に見れば1970年代のドル危機よりも深刻には評価されていないということになる。
 市場では1970年代以降続いた歴史的なドル安トレンドが転換し、長期的なドル高が始まったとの見方が強くなってきている。ドルと金の逆相関が成立するのであれば、金はこれから長期にわたって下落することになるだろう。

シェール革命で原油価格も下落か?
 金に対する弱気の見方は、原油価格の見通しからも大きな影響を受けている。米国では現在シェールガスやシェールオイルの開発が進んでいる。
 
 国際エネルギー機関(IEA)の見通しによると、米国は2017年までにエネルギー生産量で世界最大となり、2035年までにエネルギーの完全自給が可能になるとしている。余ったエネルギーは輸出に振り向けることが検討されており、もしそうなれば米国の経常収支が劇的に改善する可能性が出てくる(本誌記事「シェール革命がもたらすドルと製造業の劇的な復活」参照)。
 これらの条件がすべて整うと、原油価格は大幅に下落する可能性が高い。一方、ドルの価値は高まり、結果的に金の価値も下落することになる。このシナリオは、これまで金と原油が同じ動きをしてきたという事実との整合性も取れている。

 もちろん相場のことなので将来の価格がどうなるのかは誰にも分らない。だが従来のようにドルの減価とコモディティ上昇という単純な図式が成立しなくなっていることだけは確かなようである。

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