スマホは広告の敵か?

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 米国では1~3月期の決算が続々と発表されている。この中で、IT関連企業の業績は、スマホの台頭とパソコンの衰退を如実に反映した結果となっている。

 米グーグルの売上高は前年同期比31%増の139億3900万ドル(約1兆3700億円)、純利益は前年同期比16%増の33億4600万ドル(約3280億円)だった。ネット広告が好調に推移し、四半期ベースの純利益は過去最高となった。マイクロソフトも増収増益となったが、ウインドウズ部門はパソコンの衰退で苦戦。業務用ソフトなどで全体の収益をカバーする形となった。

 パソコン衰退の影響をもっとも大きく受けたのは半導体大手のインテルで、売上高は前年同期比3%減の125億8000万ドル(約1兆2300億円)、純利益は前年同期比25%減の20億4500万ドル(約2000億円)だった。同社が減益となるのは5四半期連続で、同業のAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイシズ)も売上高が31%減の10億8800万ドル(約1070億円)、純利益は1億4600万ドル(約143億円)の赤字であった。

グーグルはスマホの影響を受けていない?
 グーグルが好決算となったのは、ネット広告が順調に推移したことが主な要因である。同社の収益のほとんどはネット広告に依存しており、広告量が増大することは同社の売上をそのまま拡大させることになる。

 マイクロソフトやインテルなど、パソコンというプラットフォームに依存していたメーカーはパソコンのシェア低下の影響をモロに受けている。一方、プラットフォームに依存しにくいグーグルは順調に業績を拡大しているという構図が見てとれる。同社は原価を抑えつつ、売上高と利益を順調に伸ばしてきた(図1)。

 だが絶好調に見えるグーグルにも死角がないわけではない。実はグーグルもパソコンからスマホへというプラットフォーム・シフトの影響を大きく受けている。ただその影響が広告の絶対量拡大というプラス要素によって相殺されているのだ。

歯止めがかからないクリック単価の下落
 絶好調に見えるグーグルが抱える懸念材料は、クリック単価の下落という問題である。グーグルの収入はその多くが検索連動型ネット広告である。検索結果に応じて関連する広告が表示され、利用者がそれをクリックするとクライアントから広告料が支払われる仕組みだ。
 
 同社がクライアントから獲得する広告収入は、広告のクリック数と広告あたりの単価を掛けた値となるため、同社が売り上げを増大させるためには、広告の絶対数に加えて単価も上昇させる必要がある。だがそのクリック単価が下落の一途を辿っているのだ。

 クリック単価が下がっている原因は利用者のスマホへの移行である。パソコンからサイズの小さいスマホへの移行が進んだことで、グーグルのクリック単価は2011年後半から2012年前半にかけて2割近くも減少した。ただスマホの普及で利用者そのものは増えており、クリック数自体は2年で1.8倍に増加した。このため、クリック単価の下落を全体のパイ拡大が上回り、増収増益を維持しているのだ(図2)。


拡大ペースが鈍化するリスクも
 クリック単価の下落は2011年第3四半期から顕著になってきた。2011年はパソコンとスマホの出荷台数が逆転した年であり、クリック単価下落の原因はスマホの台頭にあることはほぼ間違いない。一方、広告のクリック数は順調に増加しており、クリック数と単価の積となる同社の売り上げは増加が続いていた。

 2012年第4四半期にはクリック単価が持ち直す兆候も見られらが、今回の決算で再びクリック単価は下落してしまった。業界関係者の多くは単価下落はほぼ収束しつつあると見ているが、問題はこの先である。
 スマホの普及もそろそろ一段落しつつあることから、これまでと同じペースで広告が拡大するかどうかは不透明な状況である。実際、前四半期に比べてクリック数はあまり伸びておらず売上高もわずかに減少している。
 もちろん広告の伸びが鈍化したとしても、クリック単価が上昇に転じれば、同社はこれまでの拡大ペースを維持することができる。だがクリック単価、クリック数ともに伸び悩んだ場合には、同社の業績に陰りが出てくる可能性もある。

 クリック単価は、同社の業績のみならず、広告収入に依存している世界中のWebサイト運営者の収入にも大きく影響する。1サイトあたりの金額は小さくても、ネット経済全体にボディーブローのように効いてくる。同社の来期以降の決算でどの程度クリック単価が上昇するのかについて、多くの業界関係者が注目している。

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