小売大手決算から見えてくる個人消費

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 スーパーやコンビニなど2月に決算期を迎えた小売大手の業績が出揃った。
 小売店の決算動向は、個人消費の動向を分析する上で非常に重要である。特に今年はアベノミクスが実体経済にどのようなメカニズムで効果を及ぼすのかについて注目が集まっており、業績への関心は高い。

 結果は多くの企業で増収増益であった。特にその傾向が著しいのはこれまで業績に低迷に苦しんでいた百貨店で、J.フロント リテイリングや高島屋は大幅な増益となった。
 コンビニは例年通り比較的堅調な数字を維持しているが、一方でスーパーの業績はふるわない。イオンは少し明るさが見えているが、イトーヨーカ堂は売上減少に歯止めがかからない状況だ(図1)。

アベノミクスによる株高は富裕層の消費を刺激した
 百貨店の業績が好転したのは、高級品の販売が好調なことが主な要因である。大丸と松坂屋を傘下に持つJ.フロント リテイリングは経常利益ベースで40%増益、高島屋は22.6%の増益となった(図2)。

 百貨店において高額商品の売れ行きが好調なことは、日本百貨店協会が毎月発表している全国百貨店売上概況において、すでに明らかになっていた。2013年1月における美術品や貴金属類の売り上げは前年比6.8%の増加、2月はさらに伸びて8.6%の増加となった。売上高全体の伸びは1月が0.2%増、2月が0.3%増であることを考えると、高額商品の伸びが大きいことが分かる。

 高額商品の売り上げが好調なのは、アベノミクスによる株高が大きく影響している。高級車の販売が好調というデータもあり、一部の富裕層は消費を活発化させていることが伺える。年金の多くが株式で運用され、庶民が株高の恩恵を受けやすい米国と異なり、日本では株価と個人消費にはそれほど強い相関があるわけではない。ただ少なくとも富裕層に限って言えば、それなりの資産効果はあるようだ。

コンビニが堅調な売上を維持できる理由
 コンビニ各社はデフレ下にもかかわらず順調に売り上げを伸ばしている。ここ数年でコンビニ各社の売り上げは2割ほど増加している。GDPが横ばいという状況を考えると健闘しているといってよいだろう(ここでは全店売上高を指す。コンビニはフランチャイズ制を採用している会社がほとんどなので、本部企業の売り上げと店舗の売り上げは一致しない)。
 
 コンビニの売り上げが好調なのは日本独特のビジネス環境によるところが大きい。日本にはかつて大規模小売店舗法(大店法)という出店規制があり、大型店舗の出店が難しかった。コンビニは大手小売店が規制から逃れるために発達させたものであり、ある意味で政治の歪みがもたらした業態といえる。
 コンビニは利便性のよい場所に小規模な店舗を出店するやり方であり、大型スーパーと異なり定価販売を維持しやすい。結果的に安値合戦に巻き込まれることなく、高い利益率を確保することができている(図3)。

 一方で、消費者が高い買い物を強いられれている、地域の零細商店がコンビニによって駆逐されるなどの問題も起こっているが、ともかく地域商店から顧客を奪う形で継続的に売上を伸ばすことに成功している。

スーパーの低迷は構造的な問題?
 不況やデフレの影響をもっとも大きく受けているのがスーパーである。イオンは今回の決算で増収増益を確保したが、イトーヨーカ堂(セブン&アイ・ホールディングスの一部門)は単体で見れば、売上が減少しており、下落傾向に歯止めがかからない(図3、図4)。ダイエーも結局はイオンに吸収されることになった。

 日本はGDPが横ばいであることから、小売店が成長するためには、他の業態から顧客を奪う意外に方法はない。顧客を奪うターゲットは地域の零細商店ということになるが、スーパーはここをうまく取り切れていない。地域商店から顧客を奪っているのはコンビニであり、スーパーは逆にネット販売に顧客を奪われている状況だ。

 米国では大規模スーパーがその規模を生かして徹底的な低価格路線を実施し、安さを武器に急成長してきたという経緯がある。米国最大のスーパーであるウォルマートの売り上げは何と47兆円もある。だが日本は店舗規模への制限から安値販売ができず、利便性に勝るコンビニに顧客を奪われることになり、最近はネット販売の台頭に苦しんでいる。

 今のところ決算からアベノミクスの効果が見てとれるのは百貨店のみという状況である。政策の効果が中間層にも波及し、個人消費が回復してくれば本来はスーパーの売上も上向いてくるはずだ。だがスーパーにはネットという大敵が存在している。個人消費が回復してきても、スーパーの売上はそれほど増加しないかもしれない。

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