量的緩和策の拡大で、外債シフトは起きるのか?

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 日銀による異次元の量的緩和策を受けて欧米の債券市場が大きく動いている。
 政策決定会合が行われた4月4日以降、フランス国債や米国債には買いが殺到し、利回りは急低下した。ドイツはそれほど急な動きではなかったが、やはり金利は低下している。このほかベルギーやオーストリアなど欧州各国の債権も揃って利回りが低下した。

 欧米の債券が買われているのは、日銀の量的緩和策の拡大によって、日本の機関投資家が外国債券へシフトするのではないかとの思惑があるからだ。
 日本の機関投資家の外債シフトが進めば、全体の投資収益が向上し、国際収支の健全化に寄与する可能性がある。だが過度な資本逃避を招きかねないという意味で諸刃の剣でもある。

異次元の量的緩和は結果的に外債の購入を促しているが・・・
 政策決定会合前には2%台だったフランス国債の利回りは、決定会合を挟んで4月8日には1.751%になった。米国債も同様で、4月2日に1.859%だった利回りが8日には1.746%になっている。ドイツは多少戻しているがやはり5日には1.212%まで下落した。
 3月に入ってから全般に金利の低下傾向は顕著になっていたものの、決定会合以後の下落幅はこれまでになく大きなものとなっている(図1)。


 日銀の黒田新総裁は、日銀による外債の購入は為替操作と認定される可能性があるという理由から、実施には消極的であることを表明していた。実際、4日の決定会合で決められた購入資産のリストに外債は含まれていない。
 ただ、年間60兆円から70兆円にものぼる国債購入によって、金利が低下することは間違いなく、機関投資家は運用難に直面することになる。株式などの高リスク資産へのシフトはすぐに進まないことや、円安は物価目標達成の最短距離であることを考えると、今回の日銀の決定は日本の機関投資家に外債を購入するよう促しているともいえる。

すでに可能な範囲で外債シフトは進んでいる?
 だが、国内の機関投資家が現実に外債運用にシフトするのかについては疑問の声もある。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、資産の約6割を国内債で運用しており、外国債は10%未満と国内株よりも比率が低い。また大手生保も50%程度が国内債の運用となっており、外国債は15%程度にとどまっている。総じて国内の主要機関投資家は外国債に対して消極的だ。
 しかも、全体としてみれば、機関投資家は可能な範囲において外債シフトをすでに進めている。図2は日本の対外証券投資残高の推移を示したチャートである。

 米国向け、欧州向けともに、かなり以前から順調に残高を伸ばしていることがわかる。特に米国債については、米国の景気回復傾向がはっきりしてきた2010年以降急増している。
 日本の対外資産は現在650兆円ほどあるが、このうち250兆円がすでに外国債となっている。機関投資家全体のポートフォリオ・バランスを考えると、今後、劇的に残高が増える余地は少ないかもしれない。

 考えられるとすると、やはり国策的な意味での日銀による米国債購入である。FRB(米連邦準備理事会)の量的緩和策はそろそろ出口戦略を考える段階に来ており、近い将来、国債の消化が危ぶまれる可能性がある。

 そうなった時には、日本からの一定額の国債購入は渡りに船となり、為替操作と認定されるリスクも少なくなるだろう。当然円安効果も期待できる。黒田総裁はなんといっても財務官僚出身である。政府からの圧力に日銀が屈したという構図を避けられさえすれば、案外あっさりと外債の購入を決定するかもしれない。

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