中国は儲からない?貿易統計が示す真実

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 日本の貿易赤字がさらに拡大しそうな状況となっている。財務省が発表した2月の貿易統計によると、日本の貿易赤字は8カ月連続となり、輸入額は過去最大となった。円安によって石油や天然ガスの価格が上昇する一方、輸出金額の減少が続いており、赤字幅が拡大している。

 またリーマンショック後の4年間で、国別の貿易収支や輸出品目に大きな変化が生じており、従来の常識が通用しなくなってきている。日本は貿易赤字の定着という高度成長以降、経験したことのない事態に直面しているだけでなく、アジアや中国を成長市場として位置付けてきた従来型基本戦略の見直しを迫られている。

輸出は減少トレンド、輸入は増加トレンドが継続している
 貿易統計の内容をもう少し詳しく見てみよう。2月における日本の輸出額は前年同月比2.9%減の5兆2841億円であった。内訳としては中国向けの自動車や金属加工機械が大きく落ち込んでいる。
 一方、輸入額は前年同月比11.9%増の6兆615億円となり、4カ月連続の増加となった。2月としては過去最大の数値である。石油や天然ガスに加え、アジアからの衣類、通信機器の輸入が増加した結果である。
 
 輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7775億円の赤字となり、赤字は8カ月連続。円安で石油や天然ガスの輸入価格が上昇したことや、中国向けの輸出が減少したことが大きく影響した。
 2012年に入ってから輸出金額の減少が目立つようになってきており、一方輸入額の増加はリーマンショック後から一貫している。最近になって輸入額が輸出額を上回る月が増えてきたことから、貿易赤字が目立つようになってきた(図1)。


中国経済が回復すれば日本の輸出は伸びるのか?
 一般に輸出金額の減少は、欧州経済と中国経済の不振が原因とされている。特に世界経済の機関車役である中国経済が足踏み状態であることから、中国経済が復活すれば輸出も回復するのではないかと期待されている。

 だがそれは幻想に終わる可能性が高い。中国向けの輸出でもっとも大きな割合を占めているのは、電気機器(半導体、AV機器、計測機器など)と一般機械(原動機類、コンピュータ関連部品、加工機器、建機など)である。
 このうち電気機器については、多くが部品や半完成品であり、中国国内の工場で最終的に組み立てられ、欧州や米国に再輸出される。つまり中国がエンドユーザーではない。一方、一般機械については、中国の建設需要を反映したものが多く、中国がエンドユーザーとなっている。図2は中国向け輸出の内訳を示したグラフである。


 電気機器については2010年以降、毎年わずかに輸出が減少していることがわかる。これは欧州経済が不振であることや、価格競争によって製品単価が低下していることが原因である。だが中国国内の状況ではなく、世界経済全体の影響を受けているので、落ち込み幅はそれほどでもない。

 だが中国の建設需要とリンクした一般機械については、2011年から2012年にかけて25%も下落している。これは中国の建設需要が激減したことを示している。そしてこの建設需要は中国の政権交代をきっかけに、今後はあまり伸びない可能性が高いのだ。

鉄道省解体が示す中国の建設特需の終了
 過去10年における中国のGDPに対する総固定資本形成(インフラ建設に相当)の割合は40%を超えており、列島改造ブームに沸いた40年前の日本と同じ水準である(ちなみに日本は90年代には8%台に低下し、現在は4%程度である)。

 つまりこれは建設特需であり、今後はこの特需が減少してくる可能性が高い。2013年3月に開催された全国人民代表大会(本誌記事「中国・新指導部の顔ぶれから今後の方向性を探る」参照)では、政府の機構改革の目玉として鉄道省の解体と株式会社化が決議された。

 実は鉄道省は中国最大のインフラ建設利権を持つ官庁である。解体の直接の理由は行き過ぎた腐敗を是正することなのだが、本来なら既得権益層が必死で抵抗するはずである。抵抗勢力側が折れた背景には、もはや鉄道省の建設ピークは過ぎ、利権としてそれほどうまみがなくなっていることを意味している。日本の国鉄がバブル経済を境にして民営化されたことと同じ理屈だ。

 中国の新しい首相である李克強氏は就任記者会見において、中国は今後も7%成長を目指すと表明しているが、その実現は困難との見方が一般的だ。少なくとも、以前のような建設投資ブームが存在しないことだけは確かだ。

 そうなると、一般機器の中国向け輸出についても、特需要因はなくなり、基本的に世界経済の成長にリンクした緩い成長にとどまる可能性が高いといえるだろう。

中国向けに見えた輸出も実は米国向け?
 日本では、中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、日本企業の成長は中国市場の開拓にかかっているとの論調が主流だ。確かに中国が日本にとって最大の貿易相手国であることは事実だが、その内実は想像と大きく異なっている。

 中国向け輸出のほとんどを占めているのは、北米や欧州市場向け製品の半完成品や部品であり、本当の意味で中国向けのものではない。中国がエンドユーザーとなっている分野は、建機などインフラ建設特需に支えられたものが中心であり、一般消費者向けの商品というものは実は非常に少ないのである。

 中国向けに市場を開拓すれば儲かるというのは表面的な考えであり、むしろ北米や欧州市場が好調にならないと、中国向け輸出は増えないというのが実態なのだ。

再び米国が最大の貿易相手国に?
 しかも、その状況ですら足元では変化しつつある。図3は日本における、対米、対中の輸出入と貿易収支の推移を示したグラフである。


 日本はこれまで一貫して、米国に製品を輸出して儲けてきた。だがリーマンショックをきっかけに、米国向け輸出が減少し、日本の対中輸出金額は、対米輸出金額を上回った。
 だが昨年以降、米国経済が急速に回復してきていることから、対米輸出が再び増加に転じている。一方中国向け輸出は減少に転じていることから、このままいくと、再び米国向けの輸出が中国向け輸出を上回る可能性が高くなってきた。

 しかも貿易収支という面で見ると、貿易額の増減やリーマンショックなどの外的要因とは関係なく、一貫して対米黒字、対中赤字が続いているのだ。米国は、今も昔も日本にとって最大のお客さんであり、中国は一貫してお金を支払う先である。
 日本経済の方向性を議論する際には、この基本的な事実をふまえた上でなければ、ピントのズレた議論になってしまう危険性がある。

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