株価が上昇する「期間」を知る

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 円安とアベノミクスを背景にした株価上昇がスタートしてから4ヶ月が経過しようとしている。2月1日に日経平均は週間ベースで12連騰となり1959年の岩戸景気以来、2番目の記録となった。市場では長期の上昇相場入りを期待する声が上がる一方、一部にはバブル的な株価であるとして警鐘を鳴らす向きもある。
 「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育つ」という格言があるが、株価が急激に上昇する時には必ずそれを警戒する声が聞こえてくるものである。だがバブルというキーワードがあまりにも普及したために、最近は安易に「バブルだ!」というレッテルが貼られやすい。今回の株価上昇は、過去の大相場と比べて実際にどの程度のものなのか、数値を使って検証してみる必要があるだろう。

戦後日本は4つの大相場を経験している
 日本の株式市場は戦後、①朝鮮戦争特需、②神武景気・岩戸景気、③いざなぎ景気・列島改造ブーム、④バブル経済という4つの大相場を経験している(終戦直後のハイパーインフレ相場を除く)。また2003年から2007年までの間に、構造改革ブームと米国の住宅バブルを背景にした多少規模の小さい大相場も経験した(図1)。

 
 昔の相場と比較することについて、時代が変わっているので意味がないと主張する人がいるが必ずしもそうとはいえない。相場のテーマや中心となる銘柄は変わっていても、株式市場の動きを決める基本的な要素は時代でそれほど変化しているわけではないからだ。
 神武景気を背景とした「神武相場」は国際収支の黒字転換というマクロ経済的要因を背景にしたものだし、いざなぎ景気の時にはイノベーションがテーマとなり、外国人投資家が積極的に買いを入れたことが株価上昇のきっかけとなっている。また後ほど詳しく解説するが、相場が続く期間や上昇スピードも、驚くほど類似している。

 もっとも朝鮮戦争特需はGHQによる占領統治と戦後復興という特殊な事情が背景となっていたので、同じ条件で比較するのは難しいかもしれない。以下では、それ以外の大相場について、今回の株価上昇と比較してみた。

過去の4つの大相場の特徴
 今回比較対象としたのは、A.岩戸相場(1958年~)、B.いざなぎ景気・列島改造ブーム(1968年~)、C.バブル経済(1986年~)、D.構造改革ブーム(2003年~)の4つである。

 岩戸相場は神武景気に続く大型景気であった岩戸景気(1958年7月~1961年12月)を背景にした長期的な株価上昇である。株価上昇の背景には、国際収支の黒字化と技術革新による産業構造の変化があった。石炭や海運など従来型の銘柄が不調で、石油、化学、精密機器など新しい産業分野に関連した銘柄のパフォーマンスが高かった。また日本市場に外国資本が大量に流入し相場上昇のきっかけを作ったことも特筆すべき事項である。

 いざなぎ相場と列島改造ブームは、2つの相場が連続し、長期の株価上昇となった。いざなぎ景気のきっかけとなったのは1966年に実施された初の建設国債発行と驚異的なマイカーブームである。日本の国民総生産(GNP)が世界第2位となり日本経済は絶好調であった。田中角栄元首相の列島改造論が大ブームとなり、全国に建設ラッシュが沸き起こった。

 バブル経済は、1985年のプラザ合意をきっかけに進行した円高に対抗するため、大胆な金融緩和を実施したことで発生した。また内需経済への転換も提唱(前川レポート)されたことで、かつてない土地ブームが発生した。半導体産業が世界を席巻し、イノベーションという面でも相場を支えた。日経平均はとうとう4万円という水準にまで近づいた。

 2003年からの相場は小泉首相が提唱した構造改革がきかっけとなっている。絶好調の米国経済に支えられ、自動車など輸出産業が大幅に業績を伸ばし、株価も上昇した。ネット取引が普及してからはじめての大相場であり、短期売買で億単位の財産を築く個人投資家が続出したのもこの頃である。

本当の大相場というのはこんなレベルではない
 ではこれらの大相場を同じ条件で比較するとどうなるだろうか?過去の4つの大相場を今回の株価上昇と同じ条件でチャートに記載したのが図2である。すべての株価を、今回の株価上昇がスタートした2012年12月の日経平均に換算してある。


 2つの相場が連続した「いざなぎ・列島改造相場」を除くと、どの大相場も約4年でピークを迎えていることが分かる。上昇幅については、高いグループ(岩戸相場、バブル相場)は2.5倍から3倍になっており、低いグループ(いざなぎ・列島改造相場の前半、構造改革相場)は約2倍強だ。列島改造相場を単独で切り出せばこちらも約2倍強となる。

 つまり大型の株価上昇というのは最低でも3年、長いと5年程度続くものであることがわかる。また株価の上昇についても、低くても2倍、高いと3.5倍程度は見込めることになる。逆にいうとこれほどの規模にならなければ、大型の相場とはいえないのだ。

株価の適正値を評価する指標は、市場を追認するだけ
 高度成長時代は終わったので過去の事例は当てはまらないという見方もあるが、必ずしもそうではない。構造改革相場はつい最近のものであるし、とっくに成熟国家になっている米国は、リーマンショックを経ても90年代から比較すると株価は5倍近くの水準だ。

 どの相場の時も、株価は説明不能な水準まで上昇したが、後になってそれを追認する理論が生まれてくるという意味でも同じである。
 PERやPBRといった現行の指標で説明できない水準だからといって上がりすぎなのかどうかは判別できないのだ。現在は株式の利回りが債券より低くてもあまり疑問視されないが、昔は違った。だが、1960年代にあまりにも株価が上がりすぎて債券との利回りが逆転した。当時の証券市場では、その説明がつかなくなったため「利回り革命」が起こったといって処理してしまったことを忘れてはならない。
 現在、日銀はかつてない水準で量的緩和を行っており、インフレのリスクも高い。株価上昇にインフレ期待が加わると、あっという間に株価が数倍に跳ね上がることも十分に考えられるのだ。

 今回の株価上昇はスタートしてからわずかに4ヶ月しか経っていない。確かにこれまでのところは、過去の大相場と同じような動きを見せているが、もしこれが大相場になるとしても、まだまだスタート地点にすぎない。現在の段階でバブル的な株価かどうかを議論するのはナンセンスといえるだろう。本当の大相場とはこんなレベルではないのだ。

警戒すべきはバブルではなく単なる株価の循環
 むしろ我々投資家が警戒すべきなのは、今回の相場がバブルかどうかではなくて、単なる循環的な株価の上昇で終わってしまうことである。

 2009年初頭、リーマンショックによって8000円を割り込んでいた日経平均が上昇に転じ、市場ではリーマンショックからの立ち直りに大きな期待が集まった。一部にはリーマンショックをバブル崩壊後における最後の株価下落と捉え、本格的な上昇相場入りを予想する声もあった。だが2010年4月に1万1000円を突破してから株価は下落に転じ、大相場入りという予測はもろくも崩れ去ってしまった。当時の株価上昇は単なる循環的な動きにしかすぎなかったのである。

 今回の株価上昇と2009年の株価上昇を比較したのが図3である。


 図2と同様、今回の株価に前回の日経平均を合わせて記載している。今回の株価の上昇テンポは2009年の上昇テンポとかなり似ている。だが2009年はその後上昇スピードが鈍化、しばらくボックス圏で推移したのち、株価上昇から約1年で下落に転じてしまった。
 今回のタイミングにあてはめれば、2013年10月頃ということになる。また株価水準という意味でも今回に当てはめれば1万3000円までは上昇できることになる。2009年との比較という意味では、株価水準は1万3000円程度、期間は今年の10月あたりが、ひとつの目安になりそうである。
 この水準を超えてくるようであれば、大相場入りの可能性も高くなってくる。逆にいうと1万3000円程度までは大相場にならなくても上昇できる余地があることになる。
 今回の株価上昇がバブルなのかを判断するのはまだまだ先でよさそうだ。

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