バブル再生産のメカニズム

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 現在は国債バブルの真っ最中だという。80年代のバブル経済以降、バブルというキーワードはマスコミで目にしない日はないくらいメジゃーな存在になった。だが言葉の安易さとは裏腹に、そもそもバブルとは何なのか?なぜ発生するのか?実は誰もよく分かっていない。

 バブルは市場に発生した過剰な期待が引き起こすものといわれているが、なぜそのような過剰期待が形成されるのか、ハッキリとは解明されていないのだ。 もっともらしい理屈付けは存在する。 おおまかには、技術革新など実態経済面での変化に原因があるとする考え方と、過剰流動性といった貨幣経済面での変化を原因とする考え方に大別することができるようだ。

 もしバブルが純粋に貨幣的現象だとするならば、われわれ投資家は、バブルはいつでも発生し、そして永遠に消滅することはないと考えるべきだ。 図1は、150年にわたる日本株の超長期的な推移を示したチャートである。


       図1 日本株150年の超長期チャートとトレンド

 戦前は日経平均が存在していないので、当時の株価指数について日経平均からの連続性を保てるように修正を加えた。また全体の動きをまんべんなく分析できるよう、株価の数値は対数表記としてある。斜めの黒い直線は、日経平均の動きを指数関数として数学的に近似したもので、150年間のトレンドを示している。

 超長期で見ればバブルはちょっとした「ゆらぎ」でしかない

 このチャートを見れば分かるように、長期的な視点に立てば、バブルは株価の「ゆらぎ」でしかない。 この超長期チャートでは、日本株の動きはおおむね、以下の4つの時期に分けて考えることができる。

 1.明治初期から大正時代までの拡大期

 2.昭和初期から終戦までの低迷期

 3.高度成長期からバブル経済までの拡大期

 4.バブル以降の低迷期

 1と3の拡大期には、株価がトレンド線の上に位置することが多く、バブル的な上昇も見られる。これに対して2と4の低迷期には、株価はトレンドの下にあることが多い。 明治初期から大正時代までの拡大期には、日清戦争バブル、日露戦争バブル、第一次大戦バブルと3つのバブルが発生した。

 第一次大戦バブルが崩壊した後は、昭和恐慌を経て最終的には太平洋戦争敗北という国家存続が危ぶまれる水準まで追い込まれた。この間、株価は20年以上にもわたって低迷している。 戦後から80年代のバブル経済までは、40年不況やオイルショックなどいくつかの危機はあったものの、一貫して株価は上昇してきた。特に所得倍増計画が発表された1960年前後や列島改造ブームとなった1970年前後、いわゆるバブル経済といわれた1980年前後には、株価はバブル的な高騰を見せた。その後、20年にわたって現在まで株価が低迷し続けているのはご承知の通りである。

 150年間の株価の動きを純粋に貨幣現象として捉えるならば、株価は一定の期間で「ゆらぎ」ながら、トレンドに沿って上昇を続けているということになる。時としてトレンド線からおおきく上振れすることがあり、その動きが著しいとバブル的な株価となる。

 つまり、バブルは特別な現象というわけではなく、長期的な株価推移の中におけるちょっとした「波」でしかない。バブルが崩壊した後は、近い将来にまたバブルは再生産される。

バブルは消滅せず、他の資産にマネーが移動する

 超長期チャートにおけるトレンド線は、マネーサプライとほぼ動き同じとなっている。つまり、株価はマネーサプライの水準を基準に、細かい上下を繰り返しながら継続的に上昇していると考えることができる。

 マネーサプライの水準を超えて株価が上昇しているときには、マネーサプライとのバランスを取るために、他の資産からマネーが流出している。逆に、株価が下落しているときには、マネーサプライとのバランスを取るために他の資産にマネーが流入しているというわけだ。

 もう少し詳しく見てみよう。 図2は1970年以降のマネーサプライの水準と日本市場における金融資産の時価総額推移を示したものである。

 ここでいう金融資産とは、株式、国債、土地の3種類である。それぞれの金融資産の時価総額のすべてが取引されているわけではないので、取引の実態に合わせて金額を減じている(例えば株式は時価総額の約60%程度が実際の取引対象とみなしている)。       図2 金融資産(土地+株+国債)の時価総額推移とマネーサプライ

 金融資産の時価総額は多少の上下はあるものの、マネーサプライの動きに沿って一定の範囲に収まっている。このことは、個別の資産価格の上下があっても、資産に流れ込むマネーの総量は一定であり、複数の資産間をマネーが行き来しているだけであることを示している。

現在は国債バブルが膨張している最中?

 それでは、1970年以降、具体的にどの金融資産からどの金融資産にマネーが移動したのだろうか? 図3は、上記グラフの金融資産の内訳を示したものである。

      図3 マネーの移動は続く(金融資産の移動)

 グラフを見ると、株式と土地はほぼ同じような動きとなっており、国債とは逆になっていることが分かる。1980年代のバブル経済の時期には、国債の資産規模も拡大しているが、それ以上に株式と土地の時価総額が拡大している。まさにこの時期は、株と土地がバブル的水準となっていた。ところが、1989年のバブル崩壊以降は、多少の変動はあるものの、一貫して株と土地の比率が下がり国債の比率が上昇していることが分かる。

 つまり、80年代のバブルはマネーが株と土地に流入して形成されたものであり、一般にバブル崩壊と呼ばれているものは、バブルが崩壊したのではなく、国債に資金が流入して新たに国債のバブルが形成されていると解釈することができる。

国債バブルはいつ崩壊するのか

 上記のような流れでいくと、国債のバブルもいつか崩壊し、株式や土地に対して再び資金が流入するフェーズがやってくることになる。果たしてそれはいつになるのだろうか? 図4は国債バブルが発生し始めた1990年から現在までの債券価格と80年代バブル期の株価推移を比較したものである。      図4 国債の価格推移と日経平均の比較

 国債は償還までの期間によって様々な商品があり、それぞれ利回り(債権価格)が異なっている。したがって、チャートでは1990年8月に100円の価格になっていると仮定した10年債の理論価格を示している。 株価については、89年を頂点とするバブル株価の長期的なスタート地点となった1970年1月からの動きを重ねて表示した。

 株から国債へのシフトが始まった1990年以降、国債価格は2003年頃まで一貫して上昇している(金利は低下している)。金利は一定水準より下には下がりにくいので、2003年以降は価格上昇が一服しているように見えるが、国債への資金流入は続いている。

 一時4万円まで上昇した日経平均が下落に転じるのは、長期的な株価の上昇が始まってから20年後の1990年1月のことであった。同様に国債バブルが1990年から始まったと仮定すると、20年目はちょうど2010年の年初ということになる。

 長期的な価格推移を見る限り、国債価格はいつ下落に転じてもおかしくない時期に来ていることが分かる。一方で現実のマーケットはまったく逆の方向に動いている。ユーロ危機や米国経済の不透明性を理由に円は消極的な理由を背景に買い進まれ、国内で行き場の失ったマネーは国債へと流入している。 今が歴史的な折り返し地点であることは明らかだが、その結果がどうなるのかは10年後にしか分からない。だが、投資家として決断するのは今しかないのだ。

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